By: Kazusei Akiyama, MD
2012年02月
今月のひとりごと:「白い車は売ってくれないんだって。以前は。」
サンパウロ市内では最近高級車は白がブームのようです。実はこのブーム、火をつけたのはこのコラムの筆者なのです。本当に。日本在住の邦人にはなじみの深い「白い乗用車」(註1)ですが、サンパウロではもともと白色の車は商業車の位置づけがあった上に、1989年より市の法令により「タクシーが白」と決められてしまい、それ以来、はっきり言って敬遠されてきた感があります( 註2)。タクシー、営業車、個人に転売できない、など酷評されてましね。それで90年代はメタリックのシルバー系が大流行になり、街全体が「prata metálico」色になり、2000年代の前半に入り、「黒」(preto) になってしまいました。なぜこのくそ暑い国で黒なのか(註3)?
- 註1:現在世界的にみて、「ホワイト」は2割ぐらいだそうだが、日本はここ10年くらい30割以上のシェアがあるらしい。白は日本では根強い。これでも減ってきている傾向で、確かに80年代の日本では駐車場の車すべてがホワイトなど珍しくなかった。
- 註2:海外ではタクシーの色を一目瞭然にしている所がありますよね。これが観光客など現地人ではない人たちにはわかりやすいですよね。ニューヨークのオレンジ、ロンドンの黒(ここは車種までが違う!さすが)、ベルリンのベージュ。ブラジルではリオの黄色、クリチバやポルトアレグレのオレンジ。日本はどこかあったっけ。
- 註3:北米では明るい色(ホワイトやベージュなど)、ヨーロッパは暗い色、アジアではシルバー系が人気があるそうですが。
『黒い物は定義として「すべての波長を吸収する色」である。つまり、可視領域の色と同時に熱を吸収する特徴があるのだな。暑いところに黒い物を置くと、さらに熱くなるのは小学生の理科実験レベルでもわかる。それでも「高級車も大衆車も黒い車」状態になってしまい、一度読んだ記事では塗装メーカーの担当者が「(ブラジル人)は人類学的研究でもしてみないと、よく分からないですね」と言ってたのを記憶している。黒はシックであったり(註4)、ブラジル人は意外と保守的であるからそれの現れだとか、現象の諸説あるが、問題はこれだけ直射日光の強い場所で黒い車に乗ると、「暑い!」のだ。暑いとクーラーを入れる機会が増え、燃費が悪くなり、しいて大都会では空気汚染の悪化に貢献するのだな。同じ車で白と黒塗装では日中の直射日光下で内部が5度以上10度くらい差がでる試算がある。なのに「preto」だったのだな。』
実は筆者も黒い車を持ってました(2005~2009)。高級車ではなく、小型ハッチバックの黒でした。お店で薦められ、流行に乗せられて購入した手ですね。でも暑い。クーラーも前の車(註5)に比較して強くしないと効かない。それで、エコロジーの事(燃費ですな)や住居快適性を考えて、「絶対に白にするぞ」と買い換えに行ったのですが、なんとすんなり買えなかったのです。2年前の話、V社ディラーでは「作ってません」と嘘をつかれるし、T社ディラーでは「お願いだから白は買わないで」といわれる状態だったのですな。そこで筆者は臍をまげ、まわりの反対を押し切り(註6)、白い車を特注したのです。2009年ではブラジル全国1割以下のシェアであったホワイトが2011年では21%となり、シェア一番になった(註7)。サンパウロ市内の高級B社のディーラーではホワイトは2007年度販売の3%だったのが2011年には45%まで増えたらしい。表題の写真がその証拠で、最近撮ったものであるが、ホワイトがずら~と前に展示してあり、オレンジが1台、黒が端っこ、シルバーが後ろに目立たないように置いてあります。納車した当初(2009年9月)はまわりからぼろくそに言われていたのが、今は「かっこいい」んだそうです。でもサンパウロ市内ではよくタクシーに間違われて手挙げられます。
- 註4:大衆車に乗ってシックも無いと思うが。
- 註5:悲しいかな、それも当時流行のメタリックのシルバー。
- 註6:本当だぞ。
- 註7:でも日本では白が減って黒が増えてきているそうだ。今頃、脱「白でないと売れないから白」をしてるのかな?黒は暑いぞ。