コロナ検査はいろいろあります。

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Green. Igreja Matriz de São Sebastião. Caju©2022


2022年7月

コロナ検査はいろいろあります。

また今月もコロナの話です。ワクチン接種も世界各地で進み、コロナウイルスも弱毒性に変異し(現時点では) 、感染者数は依然として減りませんが死亡者数は確実に減少してきている今日この頃です。2年前のひとりごとを見ていると、新型コロナウイルス感染症は命の危険があるのでそれ相応の措置が必要!といった論調でしたので、随分と状況が改善したと言えます。現時点では各国の出入国の入国制限もかなり緩和されました。コロナ禍のステイホームで経済が停まってしまったので、各国が如何に経済や社会活動を元に戻すのか躍起になってます。ブラジルに入国するにはワクチン接種証明のみで航空機搭乗前検査は不要になり、日本では入国時の強制待機が(ほとんどの場合)無くなりました。コロナ感染した場合の隔離も初期では3週間までの場所もあったのが、今は最短5日で隔離解除できるようになってます(註1)。この状況で重要になってきているのが、コロナ陰性証明です。コロナ禍が始まった当初は今では有名なPCR検査しか感染の定性検査が無かったのですが、現在は色んな方法・方式の検査が開発され、一番手軽にできる「自己検査」に至ってます。

この様な現状から、「コロナ検査」の種類や適応、方法や精度(註2)についての問い合わせが増えてきてます。それで今回はコロナ検査に関する純粋な医学情報になります。病原体(この場合ウイルス)の検査はその病気になっているヒトに「病原体がいるか」と「その病原体に対する免疫があるか」の2種類に大きく分けられます。前者が「抗原検査」と呼ばれ、後者が「抗体検査」になります。抗原検査は「病原体の存在の調査」と「病原体の量の調査」に分けられ、前者が「定性検査」、後者が「定量検査」です。定量検査のほうが技術的に複雑で、検査器機もより高度のモノが必要になります。単純に言うと、定性検査が「あるかないか」で定量検査が「どれだけあるか」の結果が得られます。

コロナではまだそこまで行ってないのですが、他の感染症、C型肝炎ウイルス感染で例えると、抗体検査で「ウイルス感染の有無」を調査し、陽性の場合、抗原定量検査で「感染の度合い」を調査するといった様な運用方法になります(註3)。現在社会活動や保健衛生的に検査に要求されるのは、「コロナウイルスを保有しているか?」であって、抗体を持っていることによって事前に感染したかとか、感染しない(註4)等の証明は要求されてません(註5)。この様な経緯があるので、今薬局で売っている自己テストや簡要テストで簡単に抗原定性検査できるようになりました。

  • 註3:抗原定量することにより、治療の成功が判明する。現時点では、コロナ感染しているヒトのウイルス量で治療方法や投薬量が決まる訳ではない。
  • 註4:コロナウイルスの場合、ウイルス自体が変異してしまうので実質的には「感染しにくい」が正しい。
  • 註5:一度感染すると生涯免疫ができる麻疹を例にあげると、学校の寮など集団生活をする場合、血液検査で十分な抗体量を保有している事を証明できれば予防接種が免除されるような運用ができる。

次の表が現在当地で実施可能な抗原検査とそれぞれの特徴を示します。

名称、ポルトガル語

使用検体

感度

特異度(註6)

検査のタイミング(註7)

結果時間

場所(註8)

備考

RT-PCR

鼻咽頭拭い液

86%

95%

1日目〜8日目

24時間

ラボ

14日目まで検査可能、3日目〜7日目に一番感度が高い

RT-PCR

唾液

81%

95%

1日目〜8日目

24時間

ラボ

14日目まで検査可能、3日目〜7日目に一番感度が高い

RT-LAMP

鼻咽頭拭い液

唾液

86%

95%

1日目〜10日目

2時間

ラボ

3日目〜7日目に一番感度が高い

Teste molecular

鼻咽頭拭い液

唾液

86%

95%

3日目〜7日目

4時間

ラボ

分子検査

Teste rápido

鼻咽頭拭い液

93±3%

99%

3日目〜5日目

20分

ラボ

ドラッグストア

簡要テスト・クイックテスト。

日本では唾液を使用する方式もあるが、ブラジルでは認可されていない

Autoteste

鼻咽頭拭い液

約70%

99%

3日目〜5日目

20分

自宅

簡要テスト・自己テスト。

日本では唾液を使用する方式もあるが、ブラジルでは認可されていない

  • 註6:ブラジルでの実績のおおよその数字。
  • 註7:タイミングとはコロナ感染症状が出現して何日目の事です。
  • 註8:ラボとは「医療検査機関」の事です。

『この表を見て以外に思われるのが、簡要テストのほうがPCR検査より感度が高い数字が出ている事では?一般的にPCR検査がゴールドスタンダード、つまり、標準基準になるものとされているのにどうして低いかになりますね。これには理由がある。注意してみると、簡要テストのタイミングが3日目から5日目の3日間のみに高い精度があり、PCR検査は2週間の長い期間で使用可能なため、検出率が低下する。また、特異度もPCR検査のほうが低いが、これも検査器機の校正の仕方などの要因が係わってくる(註9)からなのだ。』

  • 註9:正確に校正すると100%に近い特異度である。

抗体検査は血液中にどれだけコロナウイルスに対する免疫タンパクがあるのかを調査します。どのような感染症でも抗体は感染の初期に現れるIgM、M型免疫グロブリンと後半に現れるIgG、G型免疫グロブリンがありますが、新型コロナの場合、M型は感度が低いので使用されなくなりました。したがって現状では抗体検査をする場合はIgGあるいはTotal抗体があります(註10)。抗体検査は検査時点でコロナ感染の有無を決定するのではなく、事前に感染があったかどうか調査するのに有用です。実際にはPCR検査の精度が激減する感染14日目以降に有症状の患者さんの感染有無や無症状・症状が少ない方の感染の有無の調査(註11)に使用されてます。また、ワクチン接種できない方がCOVID-19になった証明(コロナ既往歴の証明)にも利用できます。

  • 註10:当地では他に中和抗体(anticorpo neutralizante)と呼ばれる検査項目があり、これはワクチン接種によりできた抗体を定量する検査。
  • 註11:この場合は濃厚接触あるいは症状開始から3週間から4週間の間に採血するのが望ましい。

『ということで、いろんな検査があるのがわかる。それぞれの特徴を利用して必要場面で利用するわけであるが、「素人には良くわからない」と言った意見を医療現場で聞くぞ。実際少し専門的なので必要な時にはかかりつけ医に相談するのが良いと思います。』