はっきりしないと、そのうちクロマグロが食べられなくなるぞ!

By: Kazusei Akiyama, MD


2011年08月

今月のひとりごと:『はっきりしないと、そのうちクロマグロが食べられなくなるぞ!』

今月はどう医療と関係があるのだと文句が出そうなひとりごとです。実は健康に良いとされている魚食について考えてみようと始めたのです。で、結論は「優柔不断はいかん、特に欧米社会においては」だったのでした。我々日本人は礼儀正しく、平均的な価値観を好み、協調性が高く、おくゆかしい民族だと思います。狭い日本国内で生活するには非常に有用な特徴ですが、外国からみるといいもわるいも自己主張が下手と思われないでしょうか?海外でこれをやりすぎるとはっきり言ってなめられます。その最近の良い例が2010年3月にもう少しで可決されたマグロ国際取引全面禁止、漁獲規制ではないでしょうか?日本は世界のマグロの約1/4を消費するということで、クロマグロの漁獲量を2割減らせを呑みました。昨今の世界的な寿司・刺身ブーム、また健康食ブームで「日本人以外」のマグロ需要が増えているのが(そのため乱獲もふえている)一番の理由なのに。

『なぜそれほどマグロと健康が関連しているかというと、①良質の脂質源である、②良質の蛋白源である、ことが広く世界に認知されてきているから。マグロや鮭、鯖、鰯、秋刀魚など脂分が多い魚には健康に良いオメガ3脂肪酸が豊富にある(註1)。この脂肪酸を定期的に摂取すると動脈硬化や脳梗塞、虚血性心臓疾患などの予防に役立つことが解明されてる。このような循環器系の疾患が欧米人は多いので注目を浴びているのだな。蛋白源に関しては、いわゆる「肉」の問題は体内で腐敗するからいかに上手く排泄するかがポイントになる。あるいはいかに体内に残らないかが上質な蛋白質であるわけだな。簡単にいうとニチャニチャした肉は消化されても腸壁にへばりつき、そこから炎症をおこしたり、毒素を発生させたりする。一番良くないのが牛肉だな。豚肉のほうがさらっとしている。続いて鶏、いちばんニチャニチャしていなのは魚(註2)。この肉の体内腐敗はガンのリスクと直結していて、戦後の日本人の食生活の欧米化は大腸癌を3倍近く増やしているのだな。欧米でのマグロ食は元もと存在するが(註3)今回ひとりごとをしている件の関心には、それ以前に1980年代から注目された欧米での欧米食の問題→健康食ブーム→それにマッチする寿司刺身→難解かつ高価な健康食を食する(できる)欧米インテリの構図があったと思う。』

実は魚食はいいことばかり無く、メチル水銀やダイオキシン汚染問題があったり、最近では養殖ものの危険性が指摘されてます。ブラジルで流通している養殖ものの魚介類はサーモン(チリ産)、Saint PeterやTilapia、ニジマスなど(淡水、国産)、クルマエビ(汽水、国産)などがあり、水質汚染、抗生剤使用、染料着色エサ、ダイオキシン汚染などが確認されています。米国の大学の研究では養殖サーモンの内ではまだチリ産が「一番まし」とのことですが、手放しで喜んで食してもいいのか少し疑問です。ましてや現地の「sushiX」にいくとサーモンばっかり食っているブラジル人は大丈夫なのでしょうか?

『いずれにしても1970年代までは、「生で魚を食べるなんて野蛮な」とすっごく軽蔑していたブラジル人だったな、よく覚えている。(たぶん他の欧米人も同じ)。中国人においては2000年代まで、「海の魚を食べるとアレルギー体質になるし、生など身体が冷えるからとんでもない」と言ってたぞ。それがマグロ漁を規制しないといけないほどの需要になってきているのだな。でも、はっきり言って魚の味をよくわかっていない方達なので(註4)、このさいマグロの消費はご遠慮いただき、日本人を含む元もとの食文化にあった人達がいただくということにしてはいかがでしょうかね?(註5)』

 

註1:魚油=オメガ3脂肪酸:EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)。その他の栄養成分:タウリン、アスタキサンチン、ビタミン類(A,B12,D3,E)、カルシウム、鉄、亜鉛、セレン。

註2:これらの「肉」でハンバーグを作ってみるとよく判ります。さらっとした肉はバラバラになりますね。

註3:地中海料理に出てくる。イタリアではマグロのからすみ(bottarga)、ポルトガル料理もあり、また海洋国のモルジブやキリバスでは魚肉が主食。1900年代初頭にアメリカでツナ缶が開発される(ビンナガマグロ)。

註4:ブラジル人の寿司刺身の味は「醤油」の味。魚の身は単なる基質。ただでさえ脂っぽいサーモンにマヨネーズやクリームチーズを付ける。「先日刺身を食べてとってもおいしかった」と言うので「何がおいしかったか?」と聞くと、「サーモンとマグロと白身の魚(フカだったりする)」程度で”日本食通”。

註5:ちゃんと言わないと!捕鯨問題は日本がバッシングにあっているが、元もと鯨を捕りまくったのは欧米諸国(鯨油用)でほとんど全滅させたのではないか?結局戦後食肉を確保に出た日本がババを引いた形になったいるぞ!