By: Kazusei Akiyama、MD
ブラジルの医療事情(4) − 診察の受け方 {2024年11月改稿}
このシリーズの一回目で記載したように、ブラジルの医療システムは日本と違う点がかなりあります。今回は実際の診察の受け方について解説しましょう。ポイントは4つ。まず一般的に予約制であること、次に自由診療と保険診療が混在すること、診察時間や再診の仕方が異なること、そして支払い方法が異なることです。では腹痛で受診するといった例で診察の流れを解説します。
最初に診察の予約を取ります。一般的には電話またはSMSを使用します。日本語可の診察機関もあれば不可の場合も有りますが、専門性が高い医療機関ほど不可の傾向が強いようです。また、専門性の高い診察ほど、会話の内容も高度になりますので、通訳の手配が必要になる場合が多いです。
予約で尋ねられるのは、氏名、年齢、紹介元、連絡先、などの他、自由診療(パルチクラール particular、直訳すると私費診療、自費診療)か保険診療(コンベニオ convenio 、直訳すると提携診療)かを尋ねられます。医療報酬の請求の仕方が異なり、自由診療では医療費を患者さんに請求し、提携診療では直接保険会社に請求するためです。したがって提携診療はゼロ割負担になります。しかし、提携診療の方が医療報酬が圧倒的に少ないため、時間や曜日の制限が見られます(早い話、診察が短いわけです)。この傾向はブラジル国内で加入した医療保険では普通ですが、海外で加入した傷害保険などではその限りではありません。そのため、診察は自由診療で受診し、可能であれば後で保険会社から医療費の払い戻しを受けるのが賢いブラジル人の診察の受け方です。
予約の時に診察理由を聞かれることがありますが、聞いている相手は大抵事務方であり専門家ではありませんので、ここでは「昨日からお腹が痛い」ぐらいの簡単な症状を伝える程度で十分です。
次に予約した日時に医療機関に出向きます。この時、以前受けた検査結果などを持参すると、診察の参考になります。ブラジルでは検査結果は患者さんの所有物であり、本人が管理するものと考えられていますので、ちゃんと保管しておきましょう。初診ですと、カルテの作成があります。提携診療の場合、この場面で提携保険のカードを提出します。日本のように診察券は一般的ではありません。
診察時間は自由診療の場合、最低30分はかかります。じっくり話を聞いた上で、身体検査をし、必要があれば血液や大便検査、エコーやCT等画像検査、内視鏡などの検査指示がでます。ほとんどの場合、検査は別途検査機関に出向くことになります。検査費が医師の儲けになるわけではないのが日本と異なるところです。提携診療の場合、保険内容と検査内容により、保険会社の許可が必要であったり、利用可能な検査機関の制限があったりします。
診察時に、再診の有無、回数、検査結果の受け取り方法(自分が受け取って次回再診の時に持参するのか、直接医師に送られてくるのかなど)、医療費用や診断書の作成なども医師と直接相談します。一回の診察で済み、かつ、海外傷害保険などで後日払い戻し制度を利用する場合、ここで保険請求用診断書の作成も依頼します。
日本ではほとんどが保険診療なため、3割とか1割の自己負担分を(場合によっては薬代と検査代も含め)診察機関に支払いますが、ブラジルでは、診察機関、薬局、検査機関などの支払いは別々に行います(自由診療の場合)。支払は現金以外にクレジットカードの使用ができます。小切手も可能ですが近年あまり使われなくなってます。外貨での請求は法律で禁止されてます。再診・通院が多いなどの場合、月極や一括支払いも可能です。提携診療の場合、診察費と検査費の支払いは無く、薬代は大手の薬局などでは割引があることもあります。しかし、上記のような制限があります。海外傷害保険(海外旅行保険)では薬代と検査費用、交通費なども医療費として請求できますので、領収書の保管が大切です。いずれにしても、自由診療で受診するのか、提携診療で受診するのか、またどの保険会社を利用するのか等をしっかり把握しておくことが重要なポイントといえるでしょう。邦人がブラジルの健康保険に加入されている場合、診察は自由診療、検査は提携診療を使用する方法もよくみられます。
少し蛇足です。日本の国民健康保険に加入している場合、「海外療養費の請求制度」が適用でき、海外で生じた医療費も一部払い戻しがあります。領収書は必ずとっておきましょう。