またグチャグチャになりました。

By: Kazusei Akiyama, MD

Many bugs. Serra do Cipó. Caju© 2016


2018年11月

またグチャグチャになりました。

丁度この原稿執筆中にブラジルの金融決済システムに障害が出ました。サマータイムのせいです。というか、なるべきサマータイムがならなかったからです。ここまではこのコラムの24人の読者様の内ブラジル在住でない方は何の事か判らないですよね。説明します。当地では1985年よりサマータイムが実施されてます(註1)。現在の地域と方法でのサマータイムは2003年よりですが、2007年に政府が法制化し現行の実施になりました。毎年10月の第3日曜日から翌年2月の第3日曜日まで(註2)の期間、図の地域、ブラジルの約南半分で時間を一時間進める政策です。つまり国内でも時間が早まる場所とそうでない場所がでる訳です。今年は1021日開始の予定でした。ところが、今年は10月に大統領選挙があるのと、11月にENENという日本のセンター試験にあたる大学受験用の試験があるので、時間がいつもと違ったら都合悪いだろうと現行の規則を変える迷走があり(註3)、結局政策実施直前の103日に114日開始に変更すると政府発表があったのです。

オレンジ色の部分がブラジルサマータイム実施州。

  • 1:最近のサマータイム政策は1985年以来。ブラジルで初めて実施されたのは1931年で何回かの中止があった。
  • 22月の第3日曜日がカーニバル期間中にあたる場合はその次の日曜日に延期。
  • 3114日開始案と1118日開始案があった。

サマータイムは元々夏期の日照時間が長いのを利用して電力の消費を減らすのを目的にした政策です。産業活動を一時間早く終わらす事で照明の節約になり、夜間の電力の消費を減らすのが一番大きな効果ですが、その他に午後の明るい時間が自由になり、余暇の充実や活動時間が増え経済の活性化がある等がこの政策の根拠となってます。その反面、次にリストアップするような反対論も多々あり、今回ブラジルでおきた障害はコンピュータのシステムの調整と変更に関する問題そのものでした。

サマータイム反対論の根拠

  • 犯罪が増える:午後の日照時間が増えることは朝が早い事を意味し、暗い内に出勤や登校する事になり、犯罪が増える(註4)。
  • 交通事故が増える:時間切替時に交通事故増加の報告がある。
  • 大気汚染が酷くなる:夜明け前にラッシュアワーが生じ、日中より酷い大気汚染がおきる。
  • コンピュータの更新の移行コストがかかる、障害が出る可能性がある:今回のブラジルの例。
  • 寝不足になる:時間の切替で睡眠期間が移動する訳ではなく、どちらかというと同じ時間帯に寝て、早く起きるので一般的に寝不足になり、寝不足関連の健康障害が現れる。
  • 心臓発作が増える:開始直後に顕著に認められる。
  • 精神疾患が増える:鬱が増える報告があったり、自殺率の増加が認められる。
  • 4:実際バイア州ではサマータイムを実施したところ、この手の犯罪が増えたので中止した実績がある

『最近のコンピュータのシステムは時間の変化を上手く扱えるようになってきている。スマホ社会で世界を飛び回る現在に対応できるようになってるのは実感できますよね。なので、今回もブラジルが初めから取り決めの日時にサマータイムを実施していれば問題なかったのだ。それを直前に変更するからシステムの調整が間に合わないで障害が起きたのだな。ブラジルならではの現象と言えるぞ。』

電力の節約で始まったサマータイムも、社会構造や生活環境の進化で「さほど節約にならない」事が判明してきてます。最近はエアコンが普及し、夏の暑い午後や夕方に電力を大量に消費するためで(註5)、そうなると照明の電力の節約など意味が無くなってきたのですね。この様な事情に加え、生活や健康に多大な影響があるサマータイムはどちらかというとヨーロッパを始め、世界的には廃止の傾向です。ブラジルでも例外ではなく、電力節約効果が乏しい、健康に害がある、治安の問題があるなどの理由で廃止法案が国会議会を通過中です。

『と、この様に是非が問われるサマータイムだが、それを日本で導入すると議論になってますな(註6)。次の東京オリンピックのマラソンが過酷な暑さの中開催するのは良くないだろうという理由だそうだ。サマータイムにすると開催時間を早める事になるし、電力も節約するので一石二鳥とか言ってるけど。日本の夏は高温多湿なのでガンガンクーラー使ってるので暑い午後が増えるとかえって電力使うのではないかな?今年の殺人的な7月の猛暑では午前7時前に既に気温が30℃超えてたので、時間早めるのであれば3~4時間くらい早めないと効果ないのでは?まさに「焼け石に水」ですな。(笑)』