By: Kazusei Akiyama, MD
2017年07月
今月のひとりごと:『Kombuchaってお茶なの?』
このコラムの24人の読者様(註0)は「コンブチャ」と聞くと何を連想しますか?普通の日本人だと、「昆布茶」ですよね?それで、最近ブラジルではkombuchaなる物が大流行していて、初めてそのネーミングを聞いた時は「ああ、また和食系の流行か?」と筆者も思ったのでした(註1)。ところが読み進めると腸の善玉菌がどうのこうのとなっており、「?」になったのです。
- 註0:先月お二人帰国されましたので、本来は22人に戻るべきですが、「ウェブ版で読者を続ける」との事なので、引き続き24名様です。
- 註1:少し前に緑茶が流行ったでしょう。
そう、このkombuchaは1970年代に日本でも流行った「紅茶キノコ」の事です。名称については諸説ありますが(註2)、今欧米社会で流行している理由は美容と健康に良いとセレブや芸能人が消費しているからです。欧米風の発音ではコンブチャまたはコンブッカです。紅茶キノコと言えば懐かしいですね。日本の全家庭であった程流行ったのでは(註3)というくらい普及してました。これはキノコ類ではなく、菌類で、紅茶のカフェインと砂糖をエサに繁殖し、発酵により白っぽい膜が出来ます。少し酸味のある飲料になり、菌がいっぱい入ったいわゆる「発酵食品」の一種です。最近は製品化されていて、開封して直ぐに飲めます(註4)。
- 註2:キノコを昆布と勘違いしたとか、韓国語が由来だとか、コンブと言う医師が始めたとか、不明です。
- 註3:でもその後廃れて、どうなったのですかね?簡単に繁殖する反面、悪玉菌感染しやすいという辺りで維持がむつかしいのがネックだったのかな?
- 註4:bebida kombuchaで売ってます、結構高い!300mlくらいで15~20レアル。
でなぜ発酵食品が注目を浴びていると言うと、これは「腸管免疫」と密接しているからです。ヒトを含む動物の生活には、名前の如く善玉菌や食べ物になるような「良いもの」や病原菌や毒物などのような「悪いもの」があり、これの善悪の判断と防御をするのが「免疫」です。身体に危険なものを排除するとても上手くできたシステムです(註5)。言うまでも無く免疫力が低下すると病気になります(註6)。腸は食品として体内に入ったものをまず善悪の判断をし、それから良いものだけを吸収します。また、心身の安定と関係しているため「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンもほとんどが腸でつくられていますので、腸の働きを助けるものを好んで摂りましょうと言うことになるのですな。
- 註5:病原菌に対しては抗体と呼ばれる蛋白の造成やキラーT細胞の動員、体内で発生したがん細胞などにはNK細胞の動員などがあります。
- 註6:感染症や癌。アレルギーや自己免疫疾患。
『「腸活」という言葉まででてきてますな。』
その内、腸内菌は消化を助けたり、促進したり、免疫を活性化するので重要です。腸内菌は100%善あるいは100%悪といった構成ではないので、要はバランスの問題で、善を摂って悪を減らす方法です。栄養バランスの悪い食事、加工食品などで腸に入ってくるものの量・質・内容が悪いから腸内菌のバランスが悪くなり、免疫力が低下するのですね。
善玉菌:乳酸菌、ビフィズス菌など。
悪玉菌:大腸菌、ウェルシェ菌、バクテロイデス、ユウバクテリウムなど。
腸内免疫を活性化する善玉菌を増やす事はとても重要なので、流行はともかく、読者様の毎日の食生活に忘れずに摂取してくださいね。腸活や腸内菌の話しはほとんどは美容と関連してますが、特に女性に特化した現象ではありませんので、男女・老若全員該当します。表に腸内菌を増やす代表的な食品を示します(註7)。
- 註7:この話しはとても面白いので、続きます。大腸の働きについて「ひとりごと」もご参照ください(2014年5月号)。
表1:腸内菌を増やす代表的な食品