By: Kazusei Akiyama, M.D.
2020年9月
ウィズコロナの正常とは?
当地ではコロナ禍も若干落ち着いてきたようですが、このコラムの24人の読者様は皆様お元気でいらっしゃいますか。今年の3月以来、日本へ退避された方が大勢いらっしゃるので、ネットで閲覧できなければ、現地には2~3人くらいしか読者様残っておられない様な感じです。サンパウロでは8月中旬より、コロナによる死者がゼロ/日になるなど、隔離緩和されても感染拡大がストップした実感があります。しかし、世界的に見ると、コロナ禍が収束するのはまだ一年以上かかるのではないでしょうか?確実にコロナに打ち勝つのにはワクチンが必要です。現在、世界中で124社がワクチンを開発しており、その内10社程度がヒトでの臨床試験に入ってます(註1)。すでにロシア製が使用認可を受けてますね。ワクチンができても、それで大丈夫とは言えません(註2)。どんなワクチンでも同じですが、開発時の3大課題が①安全性、②予防に有効な抗体ができるか、③有効な抗体の持続期間はどれくらいか、です。①と②は年内に答えが出ても、③は実際時間が経ってみないとわからないので推測しかできません(註3)。
- 註1:その内、4社がブラジルでも臨床試験を進めてます。ブラジルはCOVID-19が多いので、ワクチンの試験をするのにとても向いているので、今後当地での臨床試験は増えると思われます。
- 註2:ワクチンを使用して病気にならないか、副作用は無いか、毒性はないか、等。
- 註3:いくら安全であり、有効な免疫ができても、その免疫が数ヶ月しか持続しなかったら、ワクチンの意味ないですね。
この様な状況の世の中なので、日本では「外出自粛」と呼ばれる隔離生活をいつまでもできる訳がありません。したがって、「共存するしかない」ので「ウィズコロナ」といった概念が浸透してきてます。先月ここで書いた「新しい生活様式」でコロナウィルスと共存するぞ、といった事ですね。この新しい生活様式は純粋に疫学的に考えると、先月の ”単なる「感染症対策として」普段しなかった行動を生活に取り入れるだけの問題” だと思いますが、人生を変えてしまうような状況なので、対応性は各個人や集団、民族によって違いが出てきます。今回はこのウィズコロナの「新しい正常」をどうするか考えていただくのに筆者の周りで実際おこった二つの出来事を展開します。
『ニューノーマルだな』
❶ 規制の一つに飲食店の営業時間の短縮があります。サンパウロ市では先程までは17時までの開店しか認められなかったのが、22時まで営業しても良いと言う事になりました。「ようやく外出して夕食に出かけられる」事になった訳ですが、皆様ご存じのように、サンパウロ市の現地人の夕食設定は夜9時頃からが習慣になってます。
『9時に行っても、10時に閉まってしまうの?』
そこで、新しい正常ではどうしたら良いのでしょうか?
a) 22時に閉まるのであれば、いつもより早いけど19時に行って、夕食を楽しむ。
b) 外食したいけど、21時開始は譲れない。22時に閉まるのであれば、出かけない。
c) どのみち外食は危険と思うので、家で自炊(またはデリバリー)する。
❷ 新しい生活様式の重要事項の一つが密を避けるです。当地の中産階級以上では女中を使う事が普通ですが、社会的に下層の人達がそのような仕事につきます。住んでいる所は密になっている場合が多いし、密になりやすい公共交通機関を利用する事がほとんどです。雇い主よりコロナ感染する可能性が高い人達と言う事になり、その人達と接すると感染リスクが増えます。
『実際サンパウロ市の疫学調査で、社会の下層部は上層部に比べ、コロナ罹患の確率は3倍であると結果がでている。』
そこで、新しい正常ではどうしたら良いのでしょうか?
a) 給金を提供し続けても女中業をしている人を本人の家から出さないようにする。
b) 女中業をしている人を雇い主の家から出さないようにする。
c) 女中の使用そのものを止める。
この2例を周りの人達に尋ねてみたところ、日本人とブラジル人では反応が違います。リアル2~3人、バーチャル24人の読者様はどうされますか?