熱中症の反対かな?

By: Kazusei Akiyama, MD


2014年09月

今月のひとりごと:『熱中症の反対かな?』

サンパウロでは相変わらず乾燥した毎日が続きます。この原稿を書いている日は湿度が14%、気温はこの冬一番あつい32℃を観測し、健康上非常に危険な状況です。気温と湿度の組み合わせは人間の生活に影響を及ぼします。湿度とは「大気中に含まれる水蒸気量を数値で表したもの」です。(註1)。低いほど水蒸気量が少ないので乾燥している事になりますね。ポル語の標記は「umidade relativa do ar」です。湿度の話は2012年9月にも「加湿器」についてひとりごとしてますのでご参照ください。

健康上の影響を考えると、例えば日本ではいわゆる高温多湿な夏期で「熱中症」が、冬期に「乾燥注意」が関係します。前者は暑さのため熱射病や脱水がおこり、ひどい場合死亡例もあります。後者の乾燥はインフルエンザが関係しているので、最近ではインフルエンザ警戒に乾燥をモニターするスマホアプリまで出てきているようですね。これはちゃんとした理由があり、湿度が20%を切るとインフルエンザウイルスが繁殖に好む環境になるからです(註2)。当地でも冬期に乾燥しますが、日本のように寒くなる訳ではありません。どちらかというと8月9月は冬でも暑くなる事が多く、そのため光化学スモッグが発生(註3)しやすい環境になり、それは湿度が低い状況と重複するので健康被害を起こしやすくなります。

順調に生活できる湿度は60%前後とされてます。はっきりした定義はありませんが、それ以上だと多湿でありいわゆるジメジメした感じが強くなっていきます。それ自体が不快であるし、カビなどが繁殖しやすい状況ですのでそれが健康を害する原因になりかねません。多湿に高温が重なると、熱中症が発症する環境になります。しかし、当地ではそれほど高温にも多湿にもなりません。健康上問題があるのは反対に低湿+光化学スモッグ+元々冬なので呼吸器感染(風邪ですな)のこの今の季節です。カンピーナス大学(UNICAMP)の研究(註4)をベースにしたブラジル独特の湿度に関する警報・注意報があります(表1)ので参考にしてください。

乾燥すると次のような症状・現象が現れます:

・呼吸器系の疾患やアレルギーの悪化

・鼻血

・皮膚の乾燥、唇のひび割れ

・目がチカチカする

・静電気の発生

・農地や森林での火災

対策は緊急報がでた場合は加湿が必要ですが(註5)、それ以外は水分補給が主になります。22人の読者様の各自宅に湿度計があれば良いのですが、最近はパソコンやスマホ用の気象情報アプリが充実してますので、予報をみながら乾燥の予防をお願いしたいものです。


註1:日常的にみる湿度は相対湿度とよばれるもので、ある気温の飽和水蒸気量に対する実測値を比率で表すので、%表示になります。他にも絶対湿度があります。

註2::インフルエンザウイルスは低湿度、低気温、暗い場所で繁殖するのでつまり冬にはやる訳ですな。詳しくは2009年5月のひとりごとをご参照ください。

註3:光化学スモッグはからっとした晴天の日にしか出現しない。サンパウロでも夏のほうが日照が強いが、夕立などスコール系の雨が多いので条件が揃うのは冬期になる。

註4:CEPAGRI, Centro de Pesquisas Meteorológicas e Climáticas aplicadas à Agriculturaの研究。

註5:加湿器や濡れタオルなどで。