平熱が低いんです…では良くないぞ!

By: Kazusei Akiyama, MD


Handroanthus albus (ipê amarelo). Gouveia. Caju©2009

2010年12月

今月のひとりごと:『平熱が低いんですでは良くないぞ!』

筆者の臨床現場でとても気になっているのが患者さんの体温です。 今年女性で34.2℃というのがありました。いわゆる「低体温」と呼ばれる状況ですね。 全体的に体温が低くなっていることは間違いないようです。 あまりデータがないのですが、日本人の場合、子供と老人の1/3が低体温であろうと推測されてます。大人のデータは見あたりませんね。30%以上だとするとこのコラムの22人の読者様のうち7人は低体温の計算になります。低体温は正常体温(註1)より低い状態と定義されますが、実は「たかが平熱が低いだけ」では済まされないのです。そして、済まされるべきではないのです。公衆衛生政策に取り入れられてもおかしくないと筆者は思います。

  • 註1:正常体温は測定方法によって数値がちがう。外気温の影響を受けにくい体内の深部体温は37.0℃前後;表層体温では舌下が36.8℃前後、腋下が36.4℃前後(いずれも±0.5℃程度の誤差がある)。子供はやや高め、お年寄りはやや低め。若干日中変動があり、朝起きた時が一番低く、午後3時頃ピークで夜にむかい下がっていく。

なぜ人間は体温があるかというと、恒温動物であるから。体温を自力で維持できるのですね。理由は生体内のいろんな化学的反応が効率よく行われる温度というものがあり、これが制御できると、生物として生活能力・生活圏が大きくなります(註2)。 通常の体温は食べ物の化学分解によって発生し、血液とともに循環します。 調節はホメオスターシス、生体恒常性とよばれる自立神経機能によります。 ヒトの場合、 手足の末梢の血管を収縮や拡張させて調整を行います。

  • 註2:その証拠に人間は北極圏から赤道まで生活が可能である。

『まず始めに「低体温」「低体温症」「冷え性」の違いを理解する事だな。「低体温症」は冬山遭難など事故で発症することがほとんどであるな。医学的に使う手もある(体温を下げて障害を受けた脳を保護する脳低温療法など)。「冷え性」は手足末端が冷たく感じる自覚症状が必須である。「低体温」は自覚症状がない。体温測定して初めて判明する。冷え性では生体を維持するのに重要な内臓の深部体温を優先させる機能がちゃんと働いているのだな(註3)。低体温ではその機能が働かないので、どんどん放熱する。内臓から冷えていることも多い。体温が低いと基礎代謝や免疫力が低下するのだな。疲れやすくなったり、むくみがとれなかったり、痩せにくくなったり、風邪をひきやすくなったり、ガンになりやすくなったりするぞ。体温が1℃下がったら免疫力が2/3になる試算があるのだな。表に低体温の主な原因と理由、対策を示す。平熱35.9℃以下の方は一度生活の見直しをしたほうがいいぞ。病気になる前に。』

  • 註3:末梢循環は放熱するので、血流を減らして熱を内部(深部)に回す。

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