By: Kazusei Akiyama, M.D.

Wood and cotton. ©Caju 2019.
2019年7月
差別はいけません。
先月市内で「第23回サンパウロLGBTプライドパレード」(註0)が行われました。パウリスタ通りから出発したパレードは例年どおり三百万人規模の人出だったそうです。いわゆるゲイパレードは日本を含め世界各国でおこなわれてますが、サンパウロ市のは世界最大級です。サンパウロ市の行政も街に二番目にお金をおとしてくれるイベント(註1)なので、LGBT大歓迎!パウリスタ通りの歩行者信号をホモカップルの図に変更する気合いの入れようです(写真)。
- 註0:ポル語では 23ª Parada do Orgulho LGBT de São Paulo
- 註1:一番お金をおとしてくれるイベントはF1グランプリです。
『こんな事に金をかけているより、「雨で故障する信号機を直したり、他に優先事項あるだろう」といった意見が多々出てましたな。』
LGBTとは「性的少数者」を総称する言葉で、1980年代より欧米で使われはじめ、四半世紀たった今すっかり定着してます。最近は色んな少数者が挙手し、LGBTQIAというのが正しいそうです。簡単に性別の問題ではなく、「セクシュアリティsexuality」という概念で定義されてます。これは「1:身体の性別」+「2:心の性別」+「3:性的指向(註2)」の三項目で構成され、1が持って生まれた遺伝子情報の性別、XかY;2が自分の性別をどう自認しているか;3が誰に対し恋愛感情を抱くか、の組み合わせになります。このコラムの24人の読者様はなんの頭文字かご存じと思いますが、確認してみると:
- L: lesbian レスビアン 1と2と3が女性
- G: gay ゲイ 1と2と3が男性
- B: bisexual バイセクシュアル 1と2は問わず、3が両性
- T: transgender トランスジェンダー 1と2が一致しない人(註3)
- Q: questioning クエスチョニング 2と3を迷ってる人(註4)または queer クィア 2を定める事に違和感を感じる人
- I: intersex インターセックス 1に「性分化疾患」がある人(註5)
- A: asexual アセクシュアル 3が無い人(註6)
『因みに、1と2が一致し、3が異性の場合がStraightストレート(ポル語ではheterossexualまたはhetero)と呼ばれてます。一番多いヤツですな。』
- 註2:発音は同じですが、「性的嗜好」ではないので、間違いがないように。
- 註3:性適合手術の対象になるグループ。全員手術する訳ではない。しないで衣装を変えてる場合は「異性装者」という。
- 註4:まあこれだけあると迷いますよね。
- 註5:これは疾患なので、ちょっと性的指向とかとは違うのでは。
- 註6:恋愛感情はともかく、性的欲求がない人。
LGBT運動が欧米で始まったのは、その社会では同性愛行為は犯罪または病気と位置づけられ、社会的な制裁の対象となっていたからであると考えられます(註7)。要するに「人権」に関する問題ですね。実際、1990年までWHO国際保健機関編集の「国際疾病分類」に記載されてました。最近ではすっかり市民権を得て、反対に逆差別がおこってます。少しでも異を唱えようものなら性的少数者に対する差別、古い価値観に縛られた権威主義者などとバッシングを受ける確立が多大であり、ストレートは肩身が狭いのではないでしょうか?医師の観点からいくと、社会的ストレスの要因であると思います(註8)(註9)。
- 註7:日本の文化では「衆道」と呼ばれる男性同性愛者が確立していた事実からも、特にそのため迫害を受けるような社会ではなかったようです。
- 註8:バッシングの恐怖もありますし、他人の指向・嗜好を強制嚥下させられるのもストレスですね。例えば、他人に迷惑かけてなかったら、ベジタリアンでもかまわないのですが、ベジタリアン思想を強制するのは虐待ですよね。
- 註9:アントニオ・グラムシが唱えた文化破壊を目標とする「文化共産主義」、家族主義の破壊の推進に利用されてますよ。
『人権とは、人間として生きる上での基本的な権利ですな。人権を守ることは、尊厳や平等、そして自由を守っていくことで、「自分という存在が平等に扱われ、そして自分のことを自分で考えて自分で決めていくことができる」状態を守る事であろう。これは人類がお互いにすべき事であり、対面通行の道である。「権利」は「義務」と両立するものであり、権利を主張する場合、自動的に義務が生じる。なので、差別をされたくないと権利を叫ぶのであれば、差別しない義務もあるのだな。これだけ色々分類するのも一種の差別ではないかなあ。』
診療所では診察時にセクシュアリティについて問診します。これは各グループ特有の疾病が関係してくるからで、別に差別している訳ではありません。筆者は誰でも「人間として」尊重するのが正しいのではないかと考えてます。どちらにしてもややこしい世の中になってきてます。ブラジルの著名なコラムニストのLuis Fernando Verissimoが書いた母と息子の会話で新社会を理解してみます。
- 「母さん、結婚相手が決まったよ。」
- 「それは良かったね。相手のお嬢さんは誰?」
- 「お嬢さんじゃないの、太郎だよ。」
- 「へ、太郎?太郎って男性じゃないの?」
- 「そう、太郎。お母さんどうかしたの?」
- 「いやあ、別に。ちょっと心臓が止まっただけ。」
- 「なんか文句あるんだったら今すぐ言ってほしいけど。」
- 「文句?文句ないよ。ただ、いつかはウチにお嫁さんが来ると思ってたの。」
- 「お嫁さんくるじゃない?男性みたいけど。」
- 「じゃあお婿さんかなあ?で、いつ太郎さんを家に連れてくるの?」
- 「いつか決めないといけないの?」
- 「一応お父さんに事前に知らせておいたほうがいいと思うからね。」
- 「父さん嫌がると思うの?」
- 「愛する息子が生涯のパートナーを見つけた喜ばしい事だから嫌がる訳ないでしょ。聞いたら満足してあの世に行くと思うよ。」
- 「母さん、なに言ってるの。今日日こんなの普通だよ。僕の友達は皆ほとんどゲイだよ。」
- 「そお?ゲイでないのは残ってないの?あんたの妹に紹介してもらいたいからねえ。」
- 「妹はお付き合いしてるから紹介いらないよ。」
- 「え?付き合ってるの?誰と?」
- 「花子っていう子だよ。」
- 「ええ?妹は女性と付き合ってるの?」
- 「母さんどうしたの?どうしてそんな悲しいの?」
- 「だって…いつかは孫の顔が見られると楽しみにしてたもの。」
- 「大丈夫。孫の顔みられるよ。僕と太郎は子供二人ほしいの。二人で精子提供してね、太郎の元カノが卵子提供してくれるって。」
- 「え?元カノ?太郎さんて元カノいるの?」
- 「うん、彼がストレートだった時の。花子っていうの。」
- 「花子?」
- 「うん、妹の相手の花子だよ。」
- 「ちょっと待って。あんたの今の彼氏の元カノが妹の今の彼女なの?」
- 「そうそう。花子が卵子くれて、僕たちは子宮借りるの。」
- 「ああ、代理母の子宮ね。誰から借りるの?」
- 「妹からだよ。」
- 「え?妹があんたと太郎の子供を作るのね?あんたの精子と妹の彼女の卵子使って。」
- 「そのとおりだよ。」
- 「と言うことは、できた子供はあんたと太郎さんと妹と花子さんと四人の子供に当たる訳ね。」
- 「そうかなあ。」
- 「この子供はママが二人、あんたと太郎さん、パパが二人、妹と花子さんできるのね。」
- 「そうだね。」
- 「と同時に、あんたの妹は出産母以外に叔母でもあるんだ。ああ、この場合は叔父か。」
- 「そうそう。それでね、次の年には二人目を作るの。今度は太郎の精子の番だよ。卵子は妹の。で花子の子宮を借りるの。まあ、取り替えっこだね。」
- 「ああ、取り替えっこね。二人目は花子さんが出産するのね。」
- 「そのとおり!よく判ってるじゃない。」
- 「うん、判った。まあ、一種の乱交と言う事だね。それも近親相姦も交えて。」
- 「そんな事ないよ。妹と花子は僕たちの子供を作るのに協力してくれるだけだよ。」
- 「ふーん。で彼女たちが子供欲しかったどうするの?」
- 「その時は僕たちが協力するの。」
- 「ええ、なんか訳判からなくなってきた。一体誰が父親で、母親で、子供は誰の子で… ああ、判った!」
- 「何が?」
- 「今後家系図書けないって。」