イライラは病気かも、病気であれば治るよ

By: Kazusei Akiyama, MD


2013年11月

今月のひとりごと:『イライラは病気かも、病気であれば治るよ』

このコラムの22人の読者様、お元気でしょうか?年末も近づいてきて、なんか「せわしない」時期ですね。年末の12月は師走と呼ばれ、いつも悠然と構えている師匠が走り回る意味だそうでなかなか言えて妙です。要するに、年末はやることが多いのですな。しかも、一年中の疲れも溜まって来ているし。この時点でイライラが募っている読者様もいらっしゃると思います。このイライラ、普通の生理的な現象がほとんどですが、病気が絡んだ状況であると放置しては良くないですね。医学用語で「易怒」(註1)という状態です。

  • 註1: 読みは「いど」 。

『易怒は精神状態を表し、ほとんどの精神障害の疾患にみられる。圧倒的に多いのが、不安神経障害。気分障害のうつにもあるぞ。怖いのが、認知症、特にアルツハイマー病に関連するものだな(註2)。アルツハイマー病などのイライラは急速に現れ、同じように去るので特徴があり解りやすい(註3)。うつ病の分類などについてはピンドラーマ2010年3月号にひとりごとしたので詳しくは言わないが、気分障害のうつは躁鬱病のそれであり、どちらかというと、怒りっぽくなるというより気分が落ち込んだ状態のほうが多いのでは?一般的に内科の診療でよく診るのは不安神経障害に関するものだな(註4)。また、精神症状をきたす器質的障害もあるので、まずそちらの除外が重要だな(註5)。巷でよく聞くのがカルシウムが足りないからイライラする話し。結論からいうと間違いです。というか、同時にカルシウム濃度が低下する病気、副甲状腺疾患などが神経症状をおこすから短絡的に「足りない=イライラ」になったのではないかと思う。22人の読者様のように普通に食事をしているとまずこのようなことにはならない。どちらかと言うと、ポテチ+コーラで生活しているような人たちが精神症状をおこすのだけど、これはズバリ栄養失調だな。』

  • 註2:現時点で根治法が無いため。
  • 註3:本人はあまり解ってない、周りが大変になる。
  • 註4:この場合不安神経障害とはストレス障害、適応障害、パニック障害、心気症、など。
  • 註5:甲状腺疾患、副腎や副甲状腺疾患、脳血管障害、パーキンソン病、脳腫瘍、膠原病、重金属中毒。

器質的疾患が除外できたら、精神症状は精神障害の一部になるので、そこで治療になります。不安神経障害系の治療は「抗不安薬」と「抗うつ剤」を単用あるいは併用します。抗うつ剤というと、躁鬱病の治療薬のように思われますが(そのとおりです)、いわゆる新世代抗うつ薬(註6)はこの種類の疾患の治療にもとても有効です。簡単に説明すると、抗不安薬は短期的な治療や急性期に使い、抗不安薬は中期・長期的アプローチに使用します。ブラジルの生活でおこる理不尽のためイライラしている方は、理不尽はどうにもなりませんが、障害のためにイライラが発生または悪化しているようであれば治療の対象になりますね。目安は「あまりにもイライラして、その状態自体に嫌悪している」ような状態であると考えます。

  • 註6:「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」SSRIと「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」SNRIの2種類。