インフルエンザウイルス予防接種のご案内

By: Kazusei Akiyama, MD

Pressure. Tokyo. ©Caju 2009


インフルエンザウイルス予防接種のご案内

毎年サンパウロでは、5月から10月の間は「流行性感冒」とその「二次感染あるいは合併症」、いわゆる「風邪がこじれた」状態で来所される患者さんが増えます。流感の定義は、「ウイルス性の流行性の疾患で、流行時には短期間に全年齢層を巻き込み膨大な患者数を発生する」であり、 インフルエンザウイルスやエコーウイルスなどによる上部気道の感染に次ぐ炎症がおこり、組織が弱くなったところにバクテリア(細菌)が侵入するからです。ヒトインフルエンザではウイルス感染そのものが直接死因になることは希ですが、合併症による死亡は無視できなく、特に新生児やお年寄りが標的になります。

世界保健機構(WHO)は毎年世界的な流行性に展開する可能性のある型のワクチンを接種することを勧告してます 。この予防接種は標的人口(65歳以上の方、慢性疾患患者と家族、医療従事者、感冒の季節に妊娠4ヶ月ないし10ヶ月の妊婦)はもちろんのこと、海外出張に行かれる方(特に赤道を越える旅行)、母乳を与えている女性、乳児がいる家庭の全員などにもインフルエンザワクチンの使用が勧告されてます。

さらに、北半球では2003年はSARSの流行、2005年より鳥インフルエンザの出現があり、初期症状が似ていることからも、冬期にはこれらの症例と混同される可能性のある発熱性疾患にかかる人の数をへらし、混乱を回避する意図で一般人口のインフルエンザワクチンの接種を推奨しています。昨今の状況は、冬期の発熱性疾患に対し、世界的な疫学的予測調査機能の発達をはじめ、より細かなワクチン構成など内容向上面もありますが、需要インフレに代表されるコストの上昇などのマイナス点も引き続き認められます。

インフルエンザの予防接種は以前から医学の課題であり、突然変異性のため完全予防は実現が非常に困難です。しかし近年使用されている混合ワクチンは有為な効果が多数報告されております。それらによると、完全に予防できなくても、「流感の症状の軽減」と「重症に展開する頻度の減少」が示唆されてます。この傾向は当診療所でも接種を受けた患者さんに認められます。2000年末より発売されているノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれる抗インフルエンザ薬「タミフル®」は流感の症状開始36時間までに投与しないと効果がないなど使用上の問題点がある以上に、鳥インフルエンザに有効であるとの示唆から一躍有名になりましたが、子供に副作用が出やすいため広く使用できる薬ではありません。流感は「高熱」「悪寒」「咳」「頭痛」「全身の筋肉痛」「倦怠感」の症状が出現し、一度発病するとつらい疾病です。したがって抗ウイルス剤の開発が進んでも一般的には上記の予防と軽減が実際には有用ではないかと考えます。

当診療所ではこれらの事実をふまえ、「医学は予防がベスト」の信条に基づき、予防接種を実施いたします。


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