インフルエンザはやっぱり予防接種したほうがいいのだろうな。

By: Kazusei Akiyama, MD


2009年5月

今月のひとりごと:「インフルエンザはタミフル問題もあるし、ワクチン問題もあるけれど、やっぱり予防接種したほうがいいのだろうな。」

インフルエンザはウイルスが原因の感染症です。A、B、C型があり、臨床的に問題があるのはAとBです。症状はいわゆる風邪と同じですが、普通の風邪とどこが違うかというと、伝染力、その症状の強さとこじれ方です。こじれると肺炎や脳炎など重篤な状況になることが多く、高齢者や幼児の場合、死亡する確率が増大します。インフルエンザウイルスは低気温・低湿度で光があまりない所を好んで繁殖しますので、この三条件がそろった冬期に活性化します。したがって、ブラジルでは5月から9月の間がインフルエンザのシーズンで、南にいくほど発病の条件が揃うわけです。日本を含む温帯地方の冬ほどではありませんが。しかし寒い時期には屋内で過ごすことが多くなるので、この様な空気感染する病原体にとってはさらに好都合です。

「ブラジル在住日本人の場合、こちらのシーズンだけではなく、北半球のシーズンもいつも考慮しないとだめなんだな。出張とかお客さんとか一時帰国とかで向こうの感染源とのコンタクトも十分考えられるから。」

タミフルは約8年前から発売されている抗インフルエンザ薬です。ノイラミニダーゼと呼ばれるウイルス繁殖に関与するタンパク質の抑制する薬物です。抗インフルエンザ薬は他にアマンタジンやリレンザがあります。タミフルは悲しいかな日本では使われすぎて、未成年に投与した場合異常行動が出現したとの報告で騒ぎがありました。最終的に厚労省の研究では薬物投与と異常行動の関連性がはっきりしなかったのですが、小児と未成年には基本的に出さないでおこうということになっています。さらに、3年前よりタミフルに耐性のあるA型ウイルスの報告があり、去年の年末からの北半球のインフルエンザのシーズンではノルウェイを始め、鳥取県などで多数件の耐性ウイルスが確認されています。

「この手の薬は高価だし、発症36時間までに開始しないとあまり効果がないし、副作用はあるし、政府が大量購入するので必要な時は手に入らないし、実際使いにくい薬だな。しかし、先進国では新型インフルエンザに備えてタミフルを備蓄してるけれど、いざとなると本当に大丈夫なんだろうか。」

インフルエンザワクチンはWHO-世界保健機構が次のシーズンに備えて、内容を推奨し、これをベースに製造されます。ワクチンはABの型の分類の内、亜型のAが2種類、Bが1種類で構成されています。表1に去年の南半球と北半球、今年の南半球と北半球の内容を示します。微妙に内容の変化があるのがわかります。実はこのワクチンの接種対象人口というのがあって(表2、ハイリスク群、勧告群)一般の人たちはこれらに入っていませんが、現在は任意でしたほうが良いとの見解になってきているように思われます。インフルエンザウイルスは突然変異するのが得意なので、完全な感染防御効果や発症予防効果は期待できません。でも症状の軽減と重症に陥る頻度の減少は期待できそうです。その他の問題点としては、接種場所の発疹や痛み、アレルギーや神経障害といった副作用があります。また、このワクチンを使うと風邪になりやすいといった迷信もあるみたいです。

「1950年代の技術だから鶏卵の蛋白やエーテル、ホルマリンなど製造過程に残る物質にアレルギーを起こすんだな。完璧な防御や予防は無理だし、副作用もあるけど、インフルエンザに関しては不完全な効果であったとしても、感染予防しか手がないんだな。最近WHOの心配はどちらかというと新型インフルエンザのパンデミックの予防(できたらいいね)といった方に目がむいているのが不気味だな。予防接種しても、外出後の手洗い・うがい、マスク使用、特に飛行機など乗り物を利用する場合は必須だな、人混みを避ける、体調の維持など基本的な事をしないとあまり意味がないけど。」