ブラジル医療事情:医療機関の選び方

By: Kazusei Akiyama, MD

ブラジルの医療事情(2)ー 医療機関の選び方{2024年11月校閲}

今回は病院や医者などの医療機関を選ぶ際、なにが重要なポイントとなるかについて考えてみます。一般的に、患者さんにとって良い医療機関とは患者を大切に扱ってくれる機関であり、その上で技術レベルの高さ(先端医療を含む)、アクセスの良さ(近い、行きやすい)、コミュニケーションの取りやすさ(言語や情報の透明性)、丁寧な対応(ホスピタリティ)、衛生的で清潔感のある施設、などといった条件が続き、またこれらに見合う対価、つまり納得のいく費用であることが理想的ではないでしょうか?結論から言うと、このような理想的なものが全て揃っている所はまず存在しないと思った方が良いでしょう。さらに、ブラジルに在住されている邦人の皆さんにとっては言葉の問題が大きく、日本語が通じるか否かによって選ばざるを得ないという、選択範囲の狭さがネックになってくると考えます。

言葉の問題はさておき、病気やケガの内容など、個々のケースにより医療機関選びのポイントは変わってきます。遠くに移動するのが難しい病気や頻繁に通院が必要な場合であれば近所にあったほうが便利ですし、難しい手術や検査が必要になれば技術レベルが重要になるわけです。また、医療技術的にはそれほど格差のない、例えば出産などの場合でも、産院によってホスピタリティやルームサービスが違ったり、母子同室かどうかなど、方針の差がある医療もあります。ですから、必要に応じて医療機関を使い分けるということが大切になってきます。

現在はいろいろな方法で病気や医療に関する情報が手に入ります。受診する前、すでに患者さんが病気や検査の情報をもっておられて診療がスムーズになることがある反面、それらの情報が原因で不安になってしまうことも多く見られます。そのため、診察の形式も変わってきました。最近では診察時間の8割が病気や検査の説明やインフォームド・コンセント(患者の同意)など情報の処理にあてられているとする試算もあります。

ですから、今回のテーマである「医療機関選び」でも確かな情報や判断が必要となってきます。筆者はこれには医療のプロの力が必要なのではないかと考えています。各々の事情にあった医療機関の手配や紹介、専門医療から送られる情報の分析や解説、患者さんの医療情報の管理をするなどの「かかりつけ医」がまさにその「プロの力」にあたります。母国はもちろん、あまり勝手の分からないブラジルではなおさら、小さなことでもまず相談出来る医者をみつけておくのが、上手な医療機関選びの第一歩であると力説します。

少し蛇足になりますが、ブラジルでは「医師国家試験」が存在しません。医学部を卒業して医師評議会(Conselho Regional de Medicina)というお役所に登録をすれば医者になれます。あまり厳格なシステムとは言えませんのでニセ医者も結構いるようです。そのため、医師評議会のインターネットサイトで本物かどうかをチェックできるようになっています。医者であれば必ずCRMと呼ばれる免許番号を提示する義務があり、この番号と名前をネットで照合することができますので、ぜひご活用ください。顔写真もチェックできます。サンパウロ州ではホームページwww.cremesp.org.brのENCONTRE UM MÉDICOボタンから検索できます。サンパウロ州以外はwww.cfm.org.brを利用できます。HPトップメニュー内Cidadão内Buscar por médicosが検索画面です。ちなみに筆者の免許番号は64223です。