By: Kazusei Akiyama, MD
2016年04月
本コラムは雑誌ピンドラーマの趣旨に反するとの事で、雑誌には記載されてません。
今月のひとりごと:『童話:隠れる王様』
むかし、むかし、ある所に王国がありました。王様はとても貧しい出身で、初めから王者であったわけではありません。まず、こういんの仕事に就きました。でも、王様はとても政治演説が上手で、こういんのみんなを代表してほしいと頼まれました。そのうち働き者のみんなを代表する会を作るまで至りました。まだ王様でない王様は、何を言ってもまわりのみんながチヤホヤするのをみて、自分の演説の力を確信します。
「汗水たらして働くより、喋りまくったほうが楽だな。」
それで、どうしたらこれで生活していけるか考えました。
「そうだ、自分が王様になったら、一生メシに心配しないでもいいぞ。」
そこで、みんなの会や共産圏がなくなって落胆していたインテリ層や社会正義をさけぶカトリック教会を巻き込んで選挙にでる事にしました。そうです、この王国では王様を選ぶのに選挙があったのです。「この国にあるすべての悪い事を撲滅する!」と声を大小にし、泡を飛ばしてました。初めは国全体のみんなはあまり耳を傾けなかったのですがその内、「貧乏な人を救済するぞ!」と言いだし、共感を得ました。さすがにカトリックの王国です。貧乏人の救済はカトリックの王道です。大義名分十分です。
選挙で当選して新しい王様になったのは良かったけど、今まで口先で生活してきたからどうやって王国を運営したらわかりません。
「とりあえず、前の王様がやってたとおりにするか?でもそれだと前例を撲滅する公約に反対するな~。よしわかった、やることは前のとおりで、口では前のやり方を批判しよう。」
これでやって見ると、上手くいくではありませんか!世論調査では好成績がはじき出され、みんなニコニコ、チヤホヤ。毎日のごはんは美味しいし、居心地のよいことといったらありません。本営にはどんどん廷臣が増え、参列を望む者が後を絶ちません。貢ぎ物もジャンジャン入ってきます。近習の専横などもそこは太っ腹、自分だけ旨い蜜をすってたらみんな可哀想じゃないですか。そのうち、そんなみんなで悪い事をしている所を見つかり、国民のみんなからお叱りがありました。でも、裏切られた、全然知らなかった、でなんとか話しは落ち着きました。
「みんな以外とバカなんだな。そうか、被害者のふりをしたらいいのか。」
どうしたらこの豪奢な天国が永遠に続くかしか考えられなくなってきました。
「なるほど、わかったぞ。この王国は選挙があるから、選挙に勝ち続けばいいのだ。」
そのためには投票してくれる人と選挙資金が要ります。それで国政を三つ作りました。みんなの会の人達を官僚にして、その給料の一部を吸い上げるのです。さらに、王国が発注する工事などを水増し入札させて、差額を政治献金にするのです。選挙には多数の支持を集めたほうが勝つので、貧乏な人が多い王国では、貧乏人の味方である王様に分があります。そのため、三つめの国政は貧乏な人達をずっとそのままにおしておく事です。毎月配る少しの生活保護に依存させる方法です。これで再選も果たしました。国政は順調に稼働してます。そうこうしているうちに、みんなのものと個人の持ち物の区別がつかなくなってきました。
「こんだけ貧乏人に貢献してるのだから、ちょっとくらい懐に入れてもいいだろう…」
寵臣だけではなく、王国の在り方があまりにもひどいので、それを指摘する人などもいましたが、貧乏人の生活が良くなっていくのが羨ましいのだとか、貧乏人の生活を良くしている王様の政治を妨げる悪人とかで退けました。
「これはわかりやすいぞ。悪い事はすべて”あちら側’、良い事はすべて’こちら側’。使える!」問題は定期的に選挙があり、1回しか再選できません。もう1回してるので、何回でもできるようにルールを変えようとしました。でも失敗しました。天国が終わるか?
「つなぎに代理人を入れておけばいいのだ。操縦できるやつにしよう。」という事で、その次の選挙で女王が誕生しました。王様は影の王様です。これで次の選挙で帰り咲こうとの魂胆です。しかし、女王様もいざ王座に座ってみるとなんと居心地の良いこと。私も当分ここに居るわと再選を果たします。これで王座4期目です。5期目には王様が戻り、天国が永遠に続くように見えました。
でも、単に生活に困らないためになった王様とそのつなぎの女王様です。まともな国務はできません。ばらまきくらいしか思いつきません。丁度女王様の2期目の時に今までのしわ寄せがきました。経済は崩壊。倫理は皆無。政治も浸水、朝臣達は沈む船のネズミのごとく、遁走。王国民全体の懐具合が悪くなり、民衆の機嫌が悪くなっていきます。 王様は無政府状態に至った女王様にもお手上げ状態で泣きつかれます。女王様は全部ムチャクチャにしてくれたのですごく腹が立ちますが、自分が植え付けた事実があります。共倒れしては元も子もありません。 困っているところのある日、王様とその一族、寵臣などの私利私欲や国政としての資金調達方法が明らかになります。芋づる方式にドンドン寵臣が拘置所行きになります。外では「女王辞めろ!」「王様は逮捕されろ!」などと叫ぶ民衆ばかりです。どうする王様?ここで女王様と二人して考えたのが、王様を再び宮廷にかくまえば、民衆の声など届かないし、捕縛の手に及びません。なんと妙案なのでしょう。それで、王様はさかぐらだいじんに任命され、宮廷内で万事無事に過ごす事ができましたとさ。めでたし、めでたし。