By: Kazusei Akiyama, MD
2011年04月
今月のひとりごと:『日本人は我慢づよい。そして胃ガンが多い。関係あるのかな?』
このたびは東日本大震災に被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。このコラムの22人の読者様のご親族にもいらっしゃるかも知れません。心配です。一日もはやい復興をお祈り申し上げます。筆者はたまたま災害発生直後に訪日したのですが、被害の大きさもさることながら、被災者たちの自制が目につきます。日本人の大変困難な状態な中でも整然と救援物資の配給を受けたり、避難所生活をしている姿は海外のメディアでもたくさん紹介されました。
『しかし本当に日本人は我慢が強いと思った。これは絶対に良性の特徴であるぞ。でなければあんなに狭い所で大人数が一緒に生活出来ない。しかしその反面、「ストレスが溜まる」事になるよな。ただでさえ発散が下手な民族が今回のような自粛ムードになってしまうと、さらに溜まるのでは?』
ストレスは癌と関係があるとされてます。日本人は世界でもダントツに胃ガンが多い民族です。米国の白人と比較すると、10倍から15倍発症率(註1)が多いとされてます(註2、註3)。完全な胃ガンの原因は不明ですが、食生活と生活環境が関係あり、近年ではピロリ菌の関与が指示されてます。
『この生活環境というのが大部分ストレスと関係あるのではないかと思われる。邦人が日本を離れて生活するだけで胃ガン発病のリスクが2~3倍減る試算がある論文もあるぞ。それでも多いのだな。まだすべて解明されていないけど、ピロリ菌感染に対する反応が遺伝子レベルで欧米人と異なることがわかってきている。日本の胃ガン検診は世界で一番進んでいるプログラムであるが、そのため早期発見と早期治療が可能になり、悪性腫瘍による死因の第一位ではなくなった(註4)。胃ガンの発病率は40才くらいから増え始める。この年齢になったら毎年の定期健診では必ず胃ガンの検査は受診してもらいたいな。(註5)』
最後に、今回の大震災にあたりブラジル人の友人達の見舞いのメッセージに出てくる、主に被災者された日本人像の形容詞・名詞をリストアップします。日本人はこのように見られているのですね。イイ言葉が多いと思います。
註1:発症率とは人口10万人の内、1年間でどれだけの人数が対象の疾患に新規発病する指数。
註2:日本人の胃ガン発病率は約110/10万人、北米白人は約7/10万人。
註3:ちなみにブラジルでは北(アマゾン地方)が少なく、南に行くほど多くなる。サンパウロ州では約24/10万人。日本よりかは少ないが、北米白人の3倍以上。
註4:日本人の悪性新生物による死因:男性:第1位肺ガン、第2位胃ガン、第3位肝臓ガン、第4位大腸ガン。女性: 第1位大腸ガン、第2位肺ガン、第3位胃ガン、第4位肝臓ガン。
註5:バリウム検査は技術的に優れている日本以外は検診に利用できない。ブラジルでの健診では胃カメラを実施すること。