By: Kazusei Akiyama, MD
2012年01月
今月のひとりごと:「食の安全とはどういったことだろう?」
読者の皆様、明けましておめでとうございます。2012年もどうかよろしくご愛読いただけますように( 註1)。現在年末に原稿を書いている訳ですが、2011年のトップニュースやベストなんとかなどが出回っております。邦人にとっては、東日本大震災と福島原発事故がインパクトが大だったことは間違いないでしょう。ブラジル在住の方達も、実際影響がありましたよね。今年は日本からの輸入食品が一時期見あたらなくなり、その後も不定期的な入荷しかありません。これは、ブラジルの衛生監督局(註2)が3月12日以降日本で生産された(人間用の)食品の輸入を規制したからです。理由は食の安全の確保、つまり、放射性物質に汚染されたものが国内で流通し、公衆衛生上問題を起こすことを未然に防ぐため、ブラジル国家が施行してくださったわけです。このため、食品関連の個人輸入が禁止になり、日本のじじばばが郵便で送ってくれたちょっとした食べ物が返送されるようになりました。また、行政の産地証明が必要になったので(註3)輸出入業務に時間がかかり、在庫が不安定になり、欠品が大量に出たのですね。この様な「水際で国家を守る」ような政策はブタインフルが出現したとき日本で入国規制があったように、「大抵失敗」するのですが、パフォーマンスとしては効果ありますよね。この「食の安全」で筆者が考えさせられたのが、 話がぶっ飛ぶようですが、コーンフレークスは「食べ物ではなかった」事実です。実は筆者の自宅台所に害虫が発生しました。コクゾウムシなるものですね( 註4)。要するにデンプンを食するわけですが、被害にあったのが国産白米、イタリア製乾パスタ、小麦粉で、コーンフレークスがまったく無視されてました。袋開いてたのに。ということは、虫がこれは食べ物であることを認識しなかったのでね。コーンフレークスは食べ物ではなかったのだ~。子供に食べさせていいのかな?この件で、子供に食べさせている食品は「食の安全」の狭義はクリアしているのだろうけれど、広義の安全、つまり、心身的そして社会的健康上有用かつ安全であるかということです(註5)。筆者には疑問点が多々あります。疫学の業界ではラテンアメリカでは2025年までに糖尿病人口が現在の3倍に増えると言われてます。運動不足が増加していくような生活習慣以上に、口から入る食べ物に問題があるからですね(註6)。例えば、いわゆるジャンクフードとされる食品(註7)は糖質が多いので、糖尿病と関連があることが判明してきていますが(註8)、前出のブラジル衛生監督局は「砂糖摂りすぎ注意の表示」すら実施してない。こんなので大丈夫ですかね~?食の安全は自分自身で考えたほうがよろしいのでは?
註1:去年の年末に5人帰国されましたので、19人の読者様になってしまいました。
註2:ANVISA (Agência Nacional de Vigilância Sanitária) 保健省国家衛生監督局
註3:各都道府県が産地証明を発行しないといけない。また、 福島近辺6都県の産地では放射線検査クリア証明を提出する必要がある。
註4:ゾウムシ科、世界分布するイネ科穀類の大害虫。米、麦、トウモロコシ、パスタ、乾燥芋、乾燥麺などに加害する。
註5:食の安全は「食べたら死ぬか?」から入るのはなく、「食べたら生きるか?」から考えないといけないと思う。つまり、「食べたら病気になる」のを避けるのではなく、「食べたら健康になる」のを推奨すべき。
註6:量の問題。質の問題。
註7:ジャンクフードは現行の「安全面」では全くクリアした”食品”であることを強調したい。
註8:砂糖の摂りすぎが有害であることは「まだ世間の常識ではない」のだな。 たばこが有害であることが常識になるのに約30年かかったからな。