ブラジル医療事情:医療制度の違い

Sunset at Northern Minas Gerais State. Gouveia. Caju©2010

By: Kazusei Akiyama, MD

ブラジルの医療事情(1)- 医療制度のちがい {2024年11月改稿}

外国での生活にはたくさんの不安がつきものです。その原因には言葉の壁、衣食住、治安、教育、健康など、様々な問題があるでしょう。特に精神的にも不安定になりがちな「病気」や「医療」に対する危惧はかなり高い位置にあるのは間違いないです。たとえば、いままでと同じ治療は続けられるのか。病気になったらどの病院にかかればいいのか。流行している病気やその土地特有の風土病はあるのか。その病気の予防はできるのか。などなど、健康面での不安は数え上げたらきりがありません。

もちろん、日頃から体調管理を万全にして健康な生活を送り、医療機関のお世話にならないのが一番です。でも、人間生きている限り、病気やケガと無縁ではいられません。また体調管理のための健康診断や定期検診など、予防として医療機関を利用することも多々あります。

この欄では、筆者が1995年の開業以来邦人の方を多く診療させていただいている経験をふまえ、日本人の方々から受けた相談やお悩みを元に、ブラジルの医療事情について解説します。

さて、日本の独立行政法人「海外勤務健康管理センター」が2002年に実施した調査によると「海外の医療機関への不満」の上位には次の4項目が挙げられました。

  1.  医療費が高い
  2.  言葉が通じない
  3.  医療レベルに不安がある
  4.  医療システムがむずかしい

1の医療費に関しては、実は日本もブラジルも、平均的にはそれほど変わりはありません。日本には「健康保険(国民皆保険制)」という制度があるため、自己負担は治療費の1割から3割です。しかしブラジルでは駐在員のような外国人には全額自己負担(日本で言う10割負担)になるため、高く感じるのではないでしょうか。

次に2の言葉に関しては、どれだけ流暢にポルトガル語が話せる方であっても、医療や健康に関する会話は専門用語が多いので、日本語と同じというわけにはいきません。特に病気にかかった時には不安が先行し、言葉に対する自信も失いがちです。仮に医療機関側に日本語の堪能な医師などがいたとしても、文化的・習慣的な違いや微妙なニュアンスまで理解できるかといえば、非常に難しいのではないでしょうか。病気に対する訴えの捉え方の違いなどもあるかもしれません。

3の医療レベルに対する不安は、ブラジルを含む発展途上国の滞在者に多くみられるようです。しかし、一般的に日本人が滞在する大都市周辺には先進国レベルの医療機関が多くありますので、それほど心配する必要はないと考えます。要はレベルの高い病院などをどのようにして見つけるか、受診するか、が問題なのです。

4については、どんな場面でもシステムが違うとむずかしく感じられるものです。それは医療においても例外ではありません。ですから、違いをはっきり認識することが、この問題を解決する糸口ではないかと思われます。そこで、おおまかな制度の違いを表にしましたので、ぜひ参考になさってください。

表:日本とブラジルの医療システムの違い