By: Kazusei Akiyama, MD
2014年11月
今月のひとりごと:『たかが下痢、されど下痢。』
今年の5月に便秘のひとりごとをしたのですが、好評でしたので今月は下痢の話しです。
排便は生活の一部ですが、以外と医学で問題視されていないのではないでしょうか?その証拠の一部に「毎日快便」のようなアプローチはどちらかというとサプリメント関連の業界からされていると思います。便秘と下痢、どちらも排便の異常ですが、まだ下痢のほうが医療に重要視されているでしょう。それもそのはず、下痢は子供の死因の大原因のひとつなのです。現在の日本やブラジルでも考えられなくなってますが、世界的にみると年間76万人の五歳以下の子供が下痢のために死亡してます(註1、註2)。これらはアフリカや南アジアなど、まだまだ上下水道などのインフラ整備や医療が進んでない所の事情ですね。このコラムの22人の読者様の事情はそういったものではありません。
まず下痢の定義ですが、普通便より水分の多い液体状便のことを指します。形状により、軟便、泥状便、水様便と分類しますが、はっきりした区切りは無いです(註3)。ほ乳類は通常大腸で水分を吸収する構造になってますが、何らかの原因でその水分が十分吸収されないまま排便されたのもが「下痢」です。また、吸収の問題ではなく、腸から水分が排出される状況もあり、これはさらに重篤な状態です。下痢の原因は大きく分けて、「食べ物が良くなかった」と「腸が病気になった」です。
食べ物が良くなかった(あるいは食べ方が悪かった):暴飲暴食と 食中毒ですね。食べ過ぎ、大量飲酒、冷えた飲食物、油や刺激物や人工甘味料の大量摂取、乳糖不耐症、下痢をするモノの摂取、海外での飲食、アレルギーなどです。
腸が病気になった:感染症、ストレス。吸収不良症候群、炎症性腸疾患(註4)、甲状腺機能異常、糖尿病、薬の副作用、大腸癌、お腹を冷やす、などです。
『筆者の診療所に来られる下痢の患者さんのほとんどが感染症が原因だな。ノロとかロタとかウイルス性が多い。いわゆる腸風邪だな。でも当地でバカにならないのが寄生虫。アメーバとかべん毛虫など肉眼で見えない虫の感染が結構あるぞ。まだまだ後進国だからな。患者さんは「そんな汚い所で食事してません!」とかおっしゃるが、「キレイな所」で下働きしているのは「汚い所」に住んでいる人だったりするのだな。意外と多いのがストレス関連の下痢。不安神経障害の症状の一つだな。ストレスイコールだれでもなる訳ではないけど過敏性腸症候群になりやすい体質だとよくあるぞ。』
この話しには必ず「下痢止め」云々がありますが、ほとんどの場合、体の防衛反応としての下痢なので、止めるとかえって悪化する事になります。ので、ちゃんとした診断がないかぎり、下痢止めは服用すべきではありません。 腸の病気の分類は感染症とストレス系をのぞくと重要な疾患ばかりです。下痢が1ヶ月以上続く場合はどこかおかしいですから医者に診てもらったほうが良いと考えます。
註1:5歳以下子供の一番の死因は肺炎。
註2:これでも減ったのだな。30年ほど前は年間500万人くらいだった。ブラジルも多かった。
註3:軟便と水様便の違いは一目瞭然で解りますね。
註4:潰瘍性大腸炎、クローン病、腸ベーチェット病など。