美女でも…どうしても冷めた目で見えてしまうのだな。

By: Kazusei Akiyama, MD


2011年02月

今月のひとりごと:『美女でもどうしても冷めた目で見えてしまうのだな。』

いきなり持ち上げて突き落とすひとりごとはいったい何事か?と心配になったこのコラムの22人の読者様、大丈夫です。別に変になったわけではありません。筆者が薬局に行った時の一コマを発展させようといった魂胆です。今週近所の薬局に入ろうとした時に美人なモレーナがちょうどお店を出る所で、目が合い、向こうは「お、カッチョイイ日系のおっさんだな」と思ったのかにっこり笑ってくれました。押せばひびく感じで0.01秒くらい嬉しくなったのですが、手元を見るとプラスチックのたらい(盥)を持ってますし、薬局から出てきた状況を考え合わせるとまず第一に頭に浮かんだのが「お、美人じゃん」ではなく、「ああ、膀胱炎か腟炎か痔がこじれているのだな」だったのです(註1)。

  • 註1:「カッチョイイおっさん」とはとても主観的な見方であり、「お、ちょうど良いカモだな」と美女が思ったとの一説もあり。ま~どっちにしても気分が萎える状態であったことは間違いありませんな。

『そう。内科医をやっていると探偵のような頭になるのかな?つまり断片的は情報をつなぎ合わせて意味のある説明=診断をする。この場合、女性+たらい+=「ああ」になった訳だな。 また、美人であるなしに関係無く膀胱炎や腟炎や痔になるのですな。ブラジルではbanho de assento 註2)と呼ばれる治療法があり、日本の腰湯(註3)に似ているのだが、たらいに湯と薬を入れ、おしりだけ漬けるなんとも人様に見られたくない治療があるのだな。で、これが前述の病気治療に使われる。いきなりではなく、色々やってだめだと、「じゃあbanho de assentoでやってみましょう」といった感じで処方される。この美女さんもかわいそうにこじれているのだな~、と思ってしまった。腟炎と女性の関係は説明しなくても当たり前だな。なぜ膀胱炎かというと若い女性に多いから(註4)。あと痔は性別に関係無いように思われるけど、経産婦は痔になる可能性が高いのだな(註5)。筆者は単に漬かる事によるお薬の塗布だけではなく、温かいお湯が陰部の血行を良くし回復を促進させるのではないかと思う。日本では(その気になれば)毎日お風呂に入れるけどブラジルの生活では普通無理。どうしても腰が冷えた時に一度薬なしでもいいから( 註6)ためしてみてください。』

  • 註2:発音は「ばんにょであせんと」、直訳すると「座浴」ですな。
  • 註3:腰湯は東洋医学の考え方。薬湯ですることが多い。腰とお腹を温める目的がある。半身浴とはちがい、45℃前後の高めのお湯が使われる。今回の例のような少ない量を使う場合、座湯とも呼ばれる。
  • 註4:これは尿路感染では最も多い「急性単純性膀胱炎」のはなしで、尿道の短い女性に多く、会陰部に常在する大腸菌が原因であることがほとんど。他に「慢性複雑性膀胱炎」があるが、こちらは高齢者で男性のほうが多い。
  • 註5:妊娠により、下腹部の容積が増え、直腸肛門部静脈の下流にある下大静脈系が圧迫され流通障害がおきやすいため。
  • 註6:漢方薬などを使う手もありますが、入浴剤を入れると簡単にできていいです。ただし、頭や手足が濡れたままでやると冷えるので、身体が乾いた状態で座浴しましょう。