サンパウロの水は汚いぞ

By: Kazusei Akiyama, MD


Heliconia sp.. Guaecá. Caju©2003

2009年12月

今月のひとりごと:「サンパウロの水は汚いぞ」

今月は水の話です。「水の恩はおくられぬ」と例えられるように水は生活する上でなくてはならないものの一つです。まず飲料水ですが、人間の成人体重の約2/3は水であり、栄養素や代謝物の運搬や保管、体温の調整などに使用されます。この体内の水は随時12.02.5リットル排泄されるのでこれを補う必要があります。食事に関する摂取は約1リットル(直接食べ物の水分と代謝により発生するもの)ですので、液体として11.5リットル摂取する必要があるわけです。不足すると脱水状態がおこり、摂りすぎると体内の電解質が希釈され怠くなります。また、家庭用水として、調理、洗濯、風呂、トイレなどで使用される水は1日一人あたり200リットル以上も消費されます。ということで、日常重要な水ですが、サンパウロで生活するにあたり、生活用水先進国の日本とは事情が異なります。

『まず、水道水は市内では飲用、調理には絶対適さないだろう。とにかく汚い。微生物(大腸菌や一般菌など)で汚染されているわけではないけど、不純物が多い。これは上水道網の水道管の一部が古い鉄製や鉛製のためであったり、マンションの場合リフォームの際の水道工事の汚れであったり、肉眼で見えるぐらいの汚れがゴロゴロしてるぞ。このような水をつかって洗濯すると鉄分が錆びて衣類にシミができるというので最近洗濯機の入口にかますフィルターなるものも売ってるぞ。ミネラルウォーター(MW)が必需品であるわけだ。現地の人は基本的にMWを飲料とみているけど、外国から移住してきた人の場合トイレと風呂以外、洗顔も炊事も極端になると野菜を洗うのも全部MWというのもあるな。これはMWは不純物がない、滅菌状態であると判断するからだな。でもいつまで経っても現地の水の耐性というのか抗体ができないのではないだろか?それと硬度の高い(カルシウムとマグネシウム含有量が多い)水ばかり使っていると、腎臓結石などになりやくすなるな(註1)。』

  • 1:サンパウロでよく出回っているMWは軟水が多い。今週末、某スーパーで売っていた8ブランド16商品を調査したら、63%が軟水、31%が中硬水(中軟水とも呼ばれる)、6%が硬水(輸入品)であった。炭酸入りのスパークリングウォーターágua com gásは硬度が高くなる「だから食事にあうのかな」。スポーツ仕様の商品は軟水が多い「口当たりが軽いのだな」。

結論からいうと、お風呂や洗い物は水道水で大丈夫ですが、生で飲用する水はMWのほうがおいしいし、安全です。中間の加熱(つまり滅菌)して使用する水は、お茶など風味が大切な場合(註2)はMWですが、それ以外は「フィルター」にかけた水道水で十分です。フィルターはfiltro de águaといいますが、濾過(セルロース等)機能のほかに活性炭素(溶解性物質の吸着除去機能)が必須です。色々な種類が市販されてますが、6ヶ月以上たつとフィルターが劣化し、汚れもたまり、せっかくの水がかえって汚くなります。メンテナンスが重要です。そういった意味では、大手B社からでている飲料水フィルターのレンタルはメンテ付きでいいかもしれませんね。結構でかい機械ですけど。また、20リットル入りのMWをひっくり返して給水器につけるやり方もありますが、あれは外壁が飲料する部分に漬かりますから筆者はどうしても好きになれません。ちなみに筆者宅では20リットル入りを小出しに移し替えて使ってます。(2021/3追加)最近では20リットル用にUSB充電で作動するポンプも販売されてます。

  • 2:水の味は次の要素に左右される
    • 温度:適度に冷えている(812℃)ほうがおいしい
    • 硬度:あまり低いとコクがなくなる
    • 炭酸:炭酸ガスが微量に溶けていると清涼感がある
    • 酸素:多いほどおいしい
    • 有機物:少ないほどよい
    • H:中性にちかいほどおいしく感じる

サンパウロのサラダは食べられるぞ

By: Kazusei Akiyama, MD


Haemulon sciurus. Fernando de Noronha. Caju©2009

2009年11月

今月のひとりごと:「サンパウロのサラダは食べられるぞ」

海外で生活していると心配になるものの一つが衛生環境です。世界でもトップクラスの衛生状況にある日本から出ると、同等以上の所はそうありません。いうまでもなく、ブラジルは同等以下です。なので不安になって出来るだけ輸入食材を使用されている方も多々おられるようです。

味にこだわり、調味料など日本製を使うのはともかく、安全でないから現地のものを使わない、といった考え方だな。 極端になると、輸入品のレトルト食品や冷凍物、インスタント食材しか使わないケースも診たな。危険だから生野菜を食べないので健康に悪い、先生なんとかなりませんか、とか言った相談も結構あるぞ。確かに日本ほど衛生環境が良くないにしても、疫病が流行っているわけでもないし(註1)、スラム街に住んでいるわけでもないだろうに。まわりを覧ればわかるでしょうが!稀少なケースではブラジルの農薬は大丈夫でしょうかと言うのもあったな。でも昔のように蛔虫や蟯虫の様な寄生虫の類は普通に生活していればもうほとんど無いと考えてもいいと思う。ラムブリア鞭毛虫やまれにアメーバ、エンドリマックスなど、原虫はいるな。これらには消毒が有効なのだな。』

  • 註1:2022年後半に加筆:疫病が流行ってました、新型コロナ。

2年ほど前に日本で問題になった「産地偽装」や「賞味期限の張り直し」などは「食に関する安全は行政が監視監督してくれていると疑わない」と盲信すべきではない良い例だと思います。安全は他人任せにせず自身で確保するものです。

『たしかにブラジルの野菜は虫が多いし、見た目も日本ほど綺麗ではない。痛み易いし。しかしこれは反対に考えると、日本ほど農薬や抗菌剤、保存剤を使ってない証拠だろう。つまり、ちゃんと目利きをしたら取れたての新鮮な野菜を入手することが可能なのだな。虫がすでに毒見してくれてるし。洗浄済み・消毒済みのパックも売っているけど、やはり自分で判断して買ってきた物を処理するのがこのご時節にはあっているのではないかな?農薬に関しては、野菜の種類によってどうしても多いものがあるので、このあたりも各自勉強すべきだろう。でも自給自炊をしないで都市部に住んでいる限り、ある程度の農薬に曝露されるのは仕方がないのだろうな(註2)』

  • 註2:野菜の目利きのしかた入門:全体にハリがある、関係のない斑点などがない、虫食いなどがない、大量に出回っているもの、が新鮮です。

では最後にブラジルでの生野菜の消毒方法を紹介します。一番「薬品らしい」のがスーパーや薬局に売っている「消毒用塩素」(hipoclorito de sódio、使い方はパッケージに表示してあります。水道水1リットルあたり1滴や5滴など商品により違うので要確認)を利用する方法です。同じように効果があり、簡単かつ安価が「料理酢」(vinagre de vinhoなど、スーパーで売っている一番安い物で可)です。この場合、水道水1リットルあたり、大さじ1~2杯の料理酢を入れ、すでに一回水洗いした生野菜を15~30分漬けます。トマトなど、皮が付いたものは消毒前にココヤシ石鹸(sabão de coco)とスポンジで洗います。ちなみに塩素は消毒した野菜をあとでまた水洗いする必要と手間がありますので、拙宅では料理酢を使ってます。料理酢の場合は、漬けてある液体から揚げたらそのまま消費できます。


サンパウロの風土病は

By: Kazusei Akiyama, MD


2009年10月

今月のひとりごと:「サンパウロの風土病は???、だな」

サンパウロに風土病はあるのでしょうか?これは当地に駐在して間もない邦人の相談や日本の本社健康管理室の視察などでよくあがる質問です。なんか「風土病」というと、いかにも社会整備が遅れているような感じがしますが、そうなんでしょうか?純粋に医学的に定義すると「ある一定の地域に定着した疾病」なのでこれに基づき、サンパウロ市の場合を考えてみます。

『先進国から来るとコレラ、マラリア、デング熱(いきなりこれはリオの風土病ですな)など怖い伝染病が頭に浮かぶのだな。ブラジルに住んでいた人が日本で診断のつかない病気になったりするとー現地に風土病はあったっけーとかになるは結構あったぞ。アマゾンの奥地であるまいに(であれば、怖い感染症とかあるんですな)』

開業医として思うに、ご当地風土病は二つあります:1.神経症性障害(パニックや不安抑うつ障害、ストレス関連障害など)と 2.呼吸器系疾患(鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、喘息など)。主な原因は1.ストレス、2.大気汚染+カビでしょう。ストレスはサンパウロに住んでいると事欠きません。治安の不安、交通渋滞、とろいインターネット接続、さらに日本から来ると言葉や習慣、食事の問題やブラジル人のアバウトなところなど気になるとキリがありません。

『ところが、ブラジル人でもストレスは感じるのだな。でもは失礼か。何に対して感じるのが違うだけで、このような大都会になると社会の仕組みが複雑になってストレスになりやすい。これは大都会はどこでも同じ。結構薬を飲んで何とか生活している。医学部の同級生の一割ほどが精神科にすすんだけど食いはぐれが無いところをみると需要はあるのだな。その点、大体が都会から来る日本人は耐性が高いのかも。ブラジル滞在は生活面や精神面で大変は所があるからな。要するに我慢強い。』

サンパウロの大気汚染は主に自動車の排ガスによるものです。このあたりは最近行政も注目しており、今年から市環境局主導の排ガス車検が始まりました(Controlarと呼ばれ、パスしないと車検が受けられない)。

『不運なことにこの街ができた地形は高低が多いので、坂道を登る時にエンジンをふかすのでさらに排ガスが出るのだな。行き当たりばったりでできた大都会。そしていかにもブラジルらしいのが、排ガス車検は最近5年間製造の比較的新しい車両が対象で開始された。古い車のほうが排ガスがでるのに。ところがかの古い車は車検などお構いなしで走っているから車検ができなくなるなど関係ないのだな。車両の価格より付いている罰金のほうが大きいから車検しない。行政の長の政治家はぼろい車を取り締まって民衆の怒りを買うのが怖くて見てみないふり。機械物だからいつかは壊れて排除されるのを待つ政策ですな。その反面、低公害とされるエタノールエンジンの先進国であるのもブラジルらしい。』

馬鹿にならないのがカビです。当地には大変多く、今季節です。カビは高湿度、高温、腐敗物などを好みます。サンパウロ市は平均気温や平均湿度を見るとさほど悪条件でもないのですが、家の建造の仕方や建材などが関係あるのではないかと考察します。亜熱帯地方特有の雨期に煉瓦や漆喰などの建材が水分を含み、さらに、建付がいい加減なので埋め込んである水道管などの水漏れや壁からの浸水などで住居のミクロな環境では湿度が非常に高くなるわけです。カビの予防は通気をよくするのと日光浴ですが、市内の住宅は建て込んでいるし、日当たりが悪いし、と条件はよくありません。ちなみに我々のまわりでよく観察されるカビはAspergillusPenicillumCladosporiumAlternariaなどです。

『カビの胞子が呼吸器に入り、直接病気をおこさなくても感染症の土壌を作る。これが一番多いのでは。原因である場合、繁殖するスピードが遅いので慢性化しやすいし、急激や重篤な症状が出にくい。胞子自体にアレルギーをおこす場合もあるし、カビが産生する物質(主に自身が付着している所を分解する酵素、エサになるのですな。これがカビの臭いの素。)に対するアレルギーも考えられる。なぜか夏より冬から春にかけてがカビの季節で、呼吸器疾患になりやすい季節とかぶるのもサンパウロの特徴ではないかな。カビに関しては本当に住居環境が悪いぞ。』

ストレスと大気汚染は各自の努力ではどうにもならないところが多いです。カビはある程度対策ができるのではないでしょうか?除湿器や除湿剤を使用したり、できるだけクローゼットなどの換気を心がけたり、住宅のメンテナンスをしっかりしたり、洗顔や鼻洗浄をしたり、などできることはあります。特に1日の間過ごす時間が多い寝室では空気洗浄機の設置は必須だと考えます。カビ退治は終わりなき戦いですが、サンパウロでは健康法の一つだと思いませんか?


患者さんはお客様?

By: Kazusei Akiyama, MD


2009年9月

今月のひとりごと:「患者さんはお客様?」

今月はガラッと視点を変えて、医師と患者さんの関係についてのひとりごとです。英語ではDoctor-patient relationshipと呼ばれるのですが、これが上手く機能すると患者さんの健康問題に関する情報の提供や治療の方針、リスクのマネージメントなどがスムーズにいくとされます。医師と患者がコミュニケーションを持つ場面が多い一般内科や心療内科、精神科などで非常に重要で、コンタクトが少ない放射線科や臨床検査科などではあまり問題になりません。

『これはあまりにも医師側の態度が高圧的かつ技術や知識が独占的であったために現れたのだな。一昔の医師は自分の言っているとおりにすれば良いのだとか、治療に文句をつける患者は来るなとかが当たり前だった。薬を出すときもわざわざ内容がわからないように数字やコードしか表示してなかったので『医者に出された薬がわかる本』の類が出版されていたのはそんなに昔ではなかった。』

英語やポルトガル語のドクターはラテン語の「doctor=教える人」、患者は「patior=苦しむ、悩む」が語源です。漢字でも「師」と「患」の意味も同じでしょう。 診てやる、診ていただくと、もともと上下関係の強かった医師患者関係ですが、時代の流れ(特に人権問題、1980年代より)で完全に改革がおこり、情報の開示や説明(症状、診断、検査、検査結果、投薬など)の義務が医師側に生じ、患者さん側では治療方針の選択権やセカンドオピニオンの請求権が確定しました。これにより関係が同等であるとの視点から患者のことをclient(顧客、常連、元はラテン語のcliens=従属者)と名称する医療機関が増えてます。

『お客様と位置づけることは良いことのように見えるけど、反対に、はいこれが情報ですお客様の判断で好きなようにしてくださいといった状況ではないだろうか?だから、お客様の希望であれば不要な検査や処置をしたり、投薬があったりする。儲け優先主義。医療機関は美容院のようなサービスでもないし、ブティックで洋服を選ぶようなものでもないだろうに。また、自己責任といっても、自立度と依存度は人それぞれだろう。 患者さん一人一人の価値観の考慮をすべきではないのかな?これを初回にはっきり決めておかないと、聞きたいのに説明をしない医者とか、判断を共有したいのに説明を聞かない患者とかのすれ違った関係になってしまう。』

現在健康に関する関心の高まりと相まって医療・健康に関する情報の氾濫が起こってます。特にインターネットで簡単に入手出来るこれら情報は必ずしも質の高いものではありません。評価の点でも客観性を保ったものより、個人や団体の価値観に左右されるほうが多いのではないでしょうか?さらに経験談になると、マイナスであった状況のほうが発表される確率が高いと考えられます。

『人間は自身の信念や価値観を主張するもの。この連載もそうだけど、主観的なほうが楽だよな。どの程度主観的なのか見極める力がついていればよいのだか 医師側は自分のしたい処置や治療をプッシュするし、患者側は自分の聞きたい診断や処置を探すのではないかな?それにしても最近の患者さんは色々勉強してくるので、医者も『のほほんと構えて』いる訳にはいかなくなった。内科系の診察では持ち時間の2割が実際の診察で8割が情報処理に費やされるといった試算があるが、確かにそうだろうな。』

患者さんサイドの医療知識レベルの向上は大変好ましいことです。医師は患者さんの持っている情報を整理、解説し、治療方針に導くのが最近重要な役割ではないかと思います。医師患者関係を上手に利用して高度かつ納得のいく健康管理をしたいものです。


もちろんブラジルにもやって来ました、新型(ブタ)インフル。

By: Kazusei Akiyama, MD


2009年8月

今月のひとりごと:「もちろんブラジルにもやって来ました、新型(ブタ)インフル。流行るだろな、ここでも。出だしが大変だったのでこの話にはみんな感情的になっているのが怖い。」

またインフルエンザのひとりごとになってしまいました。これだけ世間を騒がせているのだから仕方がありません。7月の中旬からサンパウロでも流行してきました。いろいろ問い合わせもあるので、もう一回このテーマです。「特に邦人の場合、日本が大騒ぎになったので、心配なのではないかな。実際出張で日本に行ってみると、まだ至る所に手指消毒用のアルコールがおいてあるし、警戒を解除するきっかけがつかめてないのかも。」

前にも書きましたが、インフルエンザウイルスは、低温度+低湿度+暗い所で繁殖能力が出現します。だから、今冬期に入っている南半球で増えるわけです。蓋を開けてみれば、季節インフルとあまり変わらない新型インフルですが、強度の感染力をもっているので、流行ると思います。インフルに関する言葉がいろいろ報道され、結構みなさん混乱されているようなので表1に問い合わせの多いものをまとめてみました。

 

 

よく混乱されがちなのが、『毒性の強さと感染力の強さと致死率の高さが正比例する』なのですが、これは間違いです。毒性と致死率はそうですが、感染力とは関係がありません。つまり、病原性が低いウイルスがものすごくうつりやすいこともありうるし、反対に高病原性で感染力や弱い状況もあります。

「前者が今回の新型インフルで、後者は現時点の鳥インフル(ヒトに対し)にあたるな。感染力が強いから、病原性が強いと勘違いしている間は、それなりに注意を怠らないから、ビクビク暮らすのは不幸だけどウイルス予防には有効かも。でも、よくないのが、病原性が低いから大丈夫と油断をしてしまうことだな。感染をすることによって、つまり、ウイルス遺伝子情報の増殖をする回数が増えるほど変異の回数も増えてくるから。だから医療システムがいい加減な南半球の冬を経て、今年の北半球の冬に第二波で毒性が変わっている可能性が十分あるのだな。」

今回の世界的大流行は元々あった鳥インフルの流行に対するマニュアルのスイッチを入れてしまったから大騒ぎになったわけですが、行政も医療関係者も一般市民も感情的になってしまった感があります。例えば『フェーズが高いと病原性が高い』と勘違いされがちで、政治的な圧力で世界保健機構の発令が遅れたことが挙げられます。

「それ見ろ変異したぞと、増殖能力が高まる変異が発見されたと中国が発表したけど、実は解析ミスだったのもその類だな。ブラジルで感染者が増えているのに、チリとアルゼンチンに渡航するなと言った政府勧告とか。」

現時点では新型インフルは普通の流行性感冒と考えてよいでしょう。もし熱が出れば冷静に対応し、ちゃんと、普通の医療機関を受診するのが大切とこの筆者は思います。パニクって単なる熱あるいは流感で病院に殺到すると、いざ重症例(本当に入院や検査、タミフルなどが必要なケース)の対応が手薄になります。今サンパウロでは抗体検査がパンク状態になってますので、結果が出るのが1週間以上かかって、結果自体が意味をなしません。

「免疫のないウイルスは本当に怖い。あまりデータがないのだが、新世界発見後、アメリカ大陸の原住民虐殺の一番の原因は単なる風邪のウイルスであった説がある。ヨーロッパから白人に初めて持ち込まれていとも簡単に死んだらしい。このような事実があるから、免疫力をつける季節インフルワクチンの接種は意味があるのだな。反対に、まだ毒性が弱いうちに感染するのが正に新型インフルの免疫がついて今後一番安全かも。」

外出後の手洗いうがいは忘れずに!

タミフルやリレンザの備蓄があるようですが、間違っても予防投薬しないように!必ず医者の指示で服用してください。


 

インフルエンザはやっぱり予防接種したほうがいいのだろうな。

By: Kazusei Akiyama, MD


2009年5月

今月のひとりごと:「インフルエンザはタミフル問題もあるし、ワクチン問題もあるけれど、やっぱり予防接種したほうがいいのだろうな。」

インフルエンザはウイルスが原因の感染症です。A、B、C型があり、臨床的に問題があるのはAとBです。症状はいわゆる風邪と同じですが、普通の風邪とどこが違うかというと、伝染力、その症状の強さとこじれ方です。こじれると肺炎や脳炎など重篤な状況になることが多く、高齢者や幼児の場合、死亡する確率が増大します。インフルエンザウイルスは低気温・低湿度で光があまりない所を好んで繁殖しますので、この三条件がそろった冬期に活性化します。したがって、ブラジルでは5月から9月の間がインフルエンザのシーズンで、南にいくほど発病の条件が揃うわけです。日本を含む温帯地方の冬ほどではありませんが。しかし寒い時期には屋内で過ごすことが多くなるので、この様な空気感染する病原体にとってはさらに好都合です。

「ブラジル在住日本人の場合、こちらのシーズンだけではなく、北半球のシーズンもいつも考慮しないとだめなんだな。出張とかお客さんとか一時帰国とかで向こうの感染源とのコンタクトも十分考えられるから。」

タミフルは約8年前から発売されている抗インフルエンザ薬です。ノイラミニダーゼと呼ばれるウイルス繁殖に関与するタンパク質の抑制する薬物です。抗インフルエンザ薬は他にアマンタジンやリレンザがあります。タミフルは悲しいかな日本では使われすぎて、未成年に投与した場合異常行動が出現したとの報告で騒ぎがありました。最終的に厚労省の研究では薬物投与と異常行動の関連性がはっきりしなかったのですが、小児と未成年には基本的に出さないでおこうということになっています。さらに、3年前よりタミフルに耐性のあるA型ウイルスの報告があり、去年の年末からの北半球のインフルエンザのシーズンではノルウェイを始め、鳥取県などで多数件の耐性ウイルスが確認されています。

「この手の薬は高価だし、発症36時間までに開始しないとあまり効果がないし、副作用はあるし、政府が大量購入するので必要な時は手に入らないし、実際使いにくい薬だな。しかし、先進国では新型インフルエンザに備えてタミフルを備蓄してるけれど、いざとなると本当に大丈夫なんだろうか。」

インフルエンザワクチンはWHO-世界保健機構が次のシーズンに備えて、内容を推奨し、これをベースに製造されます。ワクチンはABの型の分類の内、亜型のAが2種類、Bが1種類で構成されています。表1に去年の南半球と北半球、今年の南半球と北半球の内容を示します。微妙に内容の変化があるのがわかります。実はこのワクチンの接種対象人口というのがあって(表2、ハイリスク群、勧告群)一般の人たちはこれらに入っていませんが、現在は任意でしたほうが良いとの見解になってきているように思われます。インフルエンザウイルスは突然変異するのが得意なので、完全な感染防御効果や発症予防効果は期待できません。でも症状の軽減と重症に陥る頻度の減少は期待できそうです。その他の問題点としては、接種場所の発疹や痛み、アレルギーや神経障害といった副作用があります。また、このワクチンを使うと風邪になりやすいといった迷信もあるみたいです。

「1950年代の技術だから鶏卵の蛋白やエーテル、ホルマリンなど製造過程に残る物質にアレルギーを起こすんだな。完璧な防御や予防は無理だし、副作用もあるけど、インフルエンザに関しては不完全な効果であったとしても、感染予防しか手がないんだな。最近WHOの心配はどちらかというと新型インフルエンザのパンデミックの予防(できたらいいね)といった方に目がむいているのが不気味だな。予防接種しても、外出後の手洗い・うがい、マスク使用、特に飛行機など乗り物を利用する場合は必須だな、人混みを避ける、体調の維持など基本的な事をしないとあまり意味がないけど。」


 

実行委員(2008):講義”Tecnologia e Aplicação da Medicina Tradicional Japonesa”

By: NewsroomCKA

2008年8月17日にサンパウロ大学医学部にて行われた慶應大学の渡辺賢治先生による漢方医学を紹介する医師と医学生向けの講義。ブラジル日本移民百周年記念事業「慶應義塾大学-サンパウロ大学合同シンポジウム」の医学部門講演の一環を院長が実行委員として担った。この講義はサンパウロ大学医学部における初めての漢方医学の教育活動であった。