海水浴をして免疫力を高めよう

By: Kazusei Akiyama, MD


Morro Dois Irmãos. Cacimba do Padre Beach. Caju©2010

2010年10月

今月のひとりごと:『海水浴をして免疫力を高めよう』

このコラムの22人の読者様、皆様お元気ですか?先月はお休みをいただきました。休暇中にはノルデスチ地方の某所でダイビングを楽しんで来ました。久々に海に潜って、その時つくづく思ったのが「人間の免疫力はすごい!」でした。なぜだか説明します。一度ダイビングしてみるとわかるのですが、どれだけ美しくて汚染のない海でも、明らかに大変な量の生物、微生物、浮遊物があります。魚介の生活代謝物はあるし、ワカメのような藻類や、辛うじて肉眼で見えるプランクトンやクラゲ類、見えない微生物、海水に溶けているミネラルなどなどです。 海水を舐めてみると色々な味がわかります。 それだけ「汚い」ところに入っていって大丈夫なのが今回のひとりごとです。

『そう。大丈夫なのだな。透明度の高い海に潜ると「汚い」のがよ~く見えるぞ。とにかく潜水作業そのものが忙しいので始めは気にもならないのだが落ち着いてくるとゾッとするぐらい生物がいるのだな。目の前できれいな熱帯魚がブリッと排泄してるし。でその中をゆらゆら移動している間に思ったのが、これだけ周りが「異物」だらけでも人間病気にもならないだけの免疫力をもっていることだな。抗菌抗菌といろいろあるが、あれはいったい何なんだろう?ダイビングしながら思ったのが、アトピー性皮膚炎に海水浴療法なるものは(註1)、これは適度な汚れが効果があるのではないか?海水には塩分を始めいろんなミネラルが溶けているのでそれがアトピーの皮膚に良いのではないかとされているが、筆者はそうは思わない。その証拠に塩水療法(註2)が無効の場合でも海水では有効例がいくらでもあるのだな。秋山説は二つ:①適当に汚い水が免疫力を高め、かつ正しい作用に導く、②海水浴は温かい所で行うので冷えが改善される(註3)。日本の小学生のアトピーの有病率は約10%とされているが、場所によっては3人に1人も有りうるそうだ。後進国では無い疾患だな。ブラジルでも少ないぞ。また、一昔はアトピーの85%が成人すると治っていたが、最近では大人になっても20%しかなおらないといったデータもある。これはアトピー要因が増えたのと、治癒する機会が減ったのと、主にステロイド使用で治るのが遅くなっている(あるいは治らなくなっている)のではないだろか?この内、治癒機会として海水浴が重要であると思いたい。アトピーでなくっても免疫には絶対にいいからこれから暑くなる季節なのでどしどし海に行ってもらいたいな。(註4)』

  • 註1:海水療法または海洋療法。正式にはタラソテラピーと呼ばれ、20世紀の初めヨーロッパで始まったレキッとした医療行為。でも日本では「タラソ」は癒し系・エステっぽいアプローチ。
  • 註2:食塩とミネラルを溶かした水で身体を洗う方法。
  • 註3:東洋医学的に診ると、アトピー患者さんは総じて冷えているのだな。炎症がおこってほてっているのに。いわゆる虚熱なのだ。これを西洋医学ではさらに冷やすので絶対によくならない。
  • 註4:日焼けには注意しましょう!

酒は百薬の長、にはなってないよな。

By: Kazusei Akiyama, MD


2010年08月

今月のひとりごと:『酒は百薬の長、にはなってないよな。』

東洋には古くから「酒は百薬の長」という言葉があります。実際ゆっくりと香りとコクなど味を楽しむ、酒席(コミュニケーション)を楽しむなどリラックスできますし、医学的には適量であれば末梢血管を拡張させ、血行をよくする作用など良い面は多々あります。でも現在の生活環境ではどうなのでしょう?結論から言うとカロリー摂りすぎの重要な要素になっているのではないかと思います。表の一般的なお酒とカロリーを見ると、例えばウイスキー1ショット125カロリー(成人男性の1日の必要カロリーの約7%)で、数値的に見るとそんなにとんでもなくはないのです。オレンジジュース(生)で1110カロリーぐらいなので比較してもカロリー量としては殺人的ではありません。問題はカロリー量ではなく、それの取り方です。一晩でオレンジジュース56杯は飲まないですよね。ところがウイスキーを56ショットは心当たりのある方は結構おられるでしょう。また、黙々とウイスキーを飲むということはありません、必ずおつまみだの食事だのさらにカロリーが取り込まれます。下手をすると、夜の一食で一日の必要カロリーを摂取していたりします。

『さらに、お酒はストレスの発散に使用されるので、「楽しむ程度」ですまないことが多いのだな。元のストレス自体も身体に悪いし。ブラジルだとカイピリーニャが好きな邦人が多いのだが、1300カロリーだぞ!このような環境でメタボになるなといっても無理かな?』


サンパウロの冬対策にはオイルヒーターがいいぞ

By: Kazusei Akiyama, MD


2010年07月

今月のひとりごと:『サンパウロの冬対策にはオイルヒーターがいいぞ』

冬になりました。意外と寒いですよね。気温の数値そのものを見てると日本から来た方にはそんなに大した寒さでは無いと思われるのですが、体感温度が低いので「一体これは?」になる事が多いようです。悪い事に特に家の中が寒く感じます。これにはいろんな理由があるのですが、今回は対策の暖房についてひとりごとです。

『いきなりだけど、東洋医学では病気の原因として邪気、つまり健康を乱し病気を引き起こす有害なものが存在するとの考え方があり、内邪(内因)と外邪(外因)に分類される。外邪は「風・寒・湿・署・燥・火」の6種類ある。外邪が病気の原因になるのは過不足と体調の組み合わせによるものなのだな。つまり体力が充実しているとちょっとした邪気は病気にならないし、なっても激しく症状が出てすぐに治る。反対もしかりだな。体調がよくないとすぐに病気なる。暖房の話で脱線しているのではないぞ。サンパウロの冬は気候以上に環境(住宅、用地)が東洋医学の概念ではよくないのだな。上記の外邪の内、「風寒湿」が特に悪いのだが、正に当地の冬は風寒湿なのだな。まず風。家の建付が悪いしドアや窓の密封性が低いのですきま風が入る。寒は冬なので気温が下がって当たり前だけど、それ以外には家の建て方が涼しいのを優先しているので建材が石とかタイルとか冷たい物が多いのだな。日当たり悪いし。さらに湿は煉瓦の壁が夏期の雨(あるいは水道管の水漏れなど)をたっぷり含み家の中が結構湿気っているのだな。このような状況ではどのタイプの暖房(一般的にブラジルで入手可能な物)が適切か考えてみよう。

サンパウロの住宅事情を考えると、オイルヒーターが一番適切と考えられるのは、ランニングコストが良いのもあるが、ジワジワと効き目があるし対流効果もあるので、空気を暖めるだけではなく、壁や床も暖かくする事であろう。また、標高が高い都市なので夜中の3時以降気温が下がるのも当地の特徴であるが、この手のヒーターを着けっぱなしにしておくと室内の温度が下がらなくって快適だぞ。つまりオイルヒーターは室温を上げるというより下げない様に使用するのがいいのだな。また、ブラジルの住宅は日本の様に床の上に座って生活することを前提に設計されていないので、これをするととても冷える。ホットカーペットやコタツを使う手もあるが、前出の隙間風、特にドア下の、があってあまりよろしくないぞ。オイルヒーターの使い方は、スイッチを入れ、サーモスタットを全開にし、快適と感じる室温に達したらゆっくりサーモスタットを小さい数字に戻し、通電が切れたところで止める。こうするとその時点の温度以下になると電源が入るので室温をキープができる。だから気温が上がる日中は電源が入らないので着けっぱなしにしておいても大丈夫なのだな。購入にあたって注意が必要なのがちゃんとしたメーカー品でないと、内部のヒーターがアンダーサイズで熱効力が悪く電源がつきっぱなしになる(要するにパワー不足だな、ホームセンターで山積みで売っているようなやつ)ようだな。高級モデルはタイマーも付いているが、これは必需ではないと思う。一度だまされたと思って使ってみてください。日本にもって帰っても使えるよ(プラグを交換する必要はあるけど)。』


メタボは怖いぞ

By: Kazusei Akiyama, MD


2010年06月

今月のひとりごと:『メタボは怖いぞ。毎日呪文のように唱えないと、なるぞ。』

前号で進化医学と生活習慣病についてお話しました。つまり、人類の進化における過程でカロリー源の認識能力やそれらの蓄積能力などが携わったわけですが、現代の生活環境においてはその能力が裏目に出て、生活習慣病になってしまう説です。いわゆる生活習慣病は最近ではメタボリックシンドローム、略してメタボと呼称されるようになりました。今回はメタボのひとりごとです。

『間違いなく現代の我々の生活環境と代謝能力はマッチしていないな。メタボは早い話、カロリー摂りすぎ症候群なのだな。それで脂肪が腹に蓄積される。で、その状態は高血圧、糖尿病、高脂血などになりやすいのだな。日本では40才以上の男性の半数弱がメタボになっている・なりかかっているため、今大騒ぎをしているが、これはなにも日本の政府が読者個人の健康を心配しているわけではない。試算では40才時点でメタボ罹患者は悪名高き後期高齢者になった75才時点で非罹患者と比較して10倍から15倍医療費がかかる。つまり、このままこの人口が後期高齢者になった時に医療費の予算がパンクするのが目に見えているからなのだな。でも予算があっても罹患しないほうが良いぞ。それだけ医療費がかかるということは、それだけ病気になることを意味しているから。さらに悪いことに、コロッと逝ってしまう病気ではなく、ジワジワ故障していくから2030年いろいろ制限のある生活をすることになってつらいぞ(註1)。人間がどれだけ金持ちになっても一日に食べられる量が上限がある。そのため、工業先進国になるほど、食糧業界は商品に付加価値を付けるため一定量の中にできるだけカロリーを詰め込むことをする訳だな。これでカロリー余剰社会のできあがりだな。だから、我々のまわりにある食べ物はよほど注意して口にしないといけない(註2)。いとも簡単にカロリー摂りすぎになる。』

  • 1:糖尿病+高血圧+高脂血症の典型的な合併症は血管障害=心筋梗塞、脳血管発作、腎不全、失明など。
  • 2:内容に注意。量に注意。質に注意。食べ方に注意。

号外:「今年のインフルエンザウイルス予防接種は迷走が続く」

まだ5月下旬の時点でもメーカー在庫がありません。一部民間で入ったところは大騒ぎのうちあっという間に無くなったもようです。行政の接種も62日まで延期され、子供は5才まで拡張されました。引き続き「現在行政が実施している予防接種を受けた方が良い」と考えられます。特設サイトを作りましたのでご参照ください(註3)。

  • 3: http://web.me.com/caju6/2010InfluenzaAtSaoPaulo

我々人類の病気も進化のたまものなのだな

By: Kazusei Akiyama, MD


Summer cloud. São Paulo. Caju©2009

2010年05月

今月のひとりごと:『我々人類の病気も進化のたまものなのだな』

病気の原因や成り立ち、それらが起こる本質を人類の進化の上で考える「進化医学」があります。1990年代の初頭より提唱され、去年のWHOのサミット会議で視点が当てられ注目を浴びました。仮説ですが、病気の治療もさることながら、健康を保つ生活をする上でいろんなヒントを与えてくれる考え方なので筆者はとても好きです(註1)。

  • 1:色々書籍が出てます。興味のあるかたは「進化医学」で検索してみてください。

150年前にダーウィンが発表した進化論を簡単にいうと生物は生存と繁殖の成功をめざし、自然選択による進化として知られる過程の結果であるのだな。病気に対する体の反応はこれの一環であるし、この観点で考えると病気になりやすい状況を回避できるのでは?一番簡単な例は「腰痛」だな。人類は二足歩行するようになり、両手が空き複雑な仕事ができるようになったが、脊椎に垂直の力がかかるようになったため起きる腰痛も同時に手に入れた。つまり生物のなかでは一番高等な仕事ができる代価なのだな。これは普段の生活の中で常に腰痛になる要因が存在していることを示す。現在のように運動不足になると(椅子に座ることが多い=運動している時間が少ない)脊髄を支える筋力が低下することを示し、腰痛になる確率が高まる。もう一つ好きな例が「人類の祖先を生存させた能力が現在の環境では病気の要因になる」だな。ほ乳類の黎明期で死に至らす原因で主なものは:①餓死、つまりカロリー補給問題;②感染症、つまり寄生虫や細菌などの侵入;③捕獲される、つまり当時支配者の恐竜などに食べられてしまった;がある。う~ん。ひとりごとだぞ。仮説。それで、我々はこれらの問題をうまくクリアした個体の子孫であるわけだが、今の生活習慣病に関連しているのだな。食べられるものであることを認識する能力は人類の甘い物に対する愛が説明できる。甘いものほどブドウ糖が多く含まれており、大変効率の良いカロリーだから甘い物を好む選択が起こったのだな。摂取したものを蓄積する能力は食べ物にありつけない時期をやり過ごす能力に直結する。これはコレステロールを含む食事を好む説明(コレステロールは蓄積されやすい)や現在の飽食=カロリー余剰の状況では必要エネルギーの何倍もの食糧が、効率よく吸収され、排出されにくく、蓄積される。これで肥満になるわけだな。だから予防するには反対方向に動く必要がある、つまりカロリー効率の低い食事をすることや摂取量を減らすべきことを示す。感染症は免疫などの能力が優れていた個体が生き残ったわけだが、現社会では先進国になるほどアレルギーや自己免疫疾患などの免疫系の病気が現出したのだな。その証拠に貧困国にいくほど寄生虫や細菌感染が多く、このような病気が少ない事実がある。免疫系が手持ちぶさたになるわけだな。あまりきれいにするとアレルギーになるぞ、ということですな。捕獲されなかった先祖は危険に対する察知能力や回避能力が優れていたわけだな。後者がストレス反応と関連し、その時代では逃げるためや戦うために筋力や集中力が増加したのだ。これが現代になると捕獲対象になるような生きるか死ぬかのような大きなストレス要因はなくなったが、永遠とつづく毎日の小さなストレスにさらされるように変化したのだな。元々瞬発力がでるようにする反応なので、長期にわたると故障してくるのだ。だから、ストレス要因に過剰反応していると故障を早めることになるのだな(言うのは易し)。ストレスは感受性を弱める、ため込んだものは放出する、のが大事ですな。この理論からいくと、現代病の予防には「食べたい衝動を抑え」「ちょっと汚い(細菌学的視点)生活をし」「ストレスをため込まない」ことになりますな。皆さんいかがでしょうか?』

号外:「今年のインフルエンザウイルス予防接種は保健所でしたほうがよいと思う」

去年から大騒ぎになっている新型インフルは疫学政策やワクチン疑惑などいろいろありますのでまたの機会にひとりごとしますが、「ブラジルでは新型インフルのワクチンが足りなくなる可能性が高い」ので「現在行政が実施している予防接種を受けた方が良い」と考えられます。4月下旬の時点でメーカー在庫がありません。また仮に入荷するであろうと言われている5月下旬では、シーズンに間に合わないかもしれません。したがって現時点では保健所などで「妊婦」「6ヶ月~2歳児」「2029才の健常成人」「年齢を問わない慢性病罹患者」を対象に接種が実施されてます(5/7まで)。5/10以降は3039才の健常成人が対象です。実施場所などの詳細は情報公開されてます(註2)。


黄熱よりデング熱のほうがかかりやすいぞ

By: Kazusei Akiyama, MD


2010年04月

今月のひとりごと:『黄熱よりデング熱のほうがかかりやすいぞ』

現在ブラジルでは去年より「感染症危険情報が発出されています」。外務省の海外安全ホームページや在サンパウロ総領事館発信の情報です。内容はデング熱と黄熱の流行についてですが、いろいろ問い合わせがありましたので今月はこのテーマでひとりごとします。

疾患の説明や症状は外務省のHPに詳しくあります(註1)のでそちらをご覧ください。確かにどちらもブラジルでは発症例が増えています。サンパウロ在住の邦人に関心が高いのは黄熱のようです。というのは、致死率の高い疾患で、2008年頃までサンパウロ州では安全とされていたのが一部予防接種勧告地域になってしまったからでしょう。黄熱は予防接種が有効な感染症なので、じゃあ全員にワクチンを打ったら終わりだろうと思われるのですが、非常に副作用の強いワクチンなのでそうは問屋が卸しません。結論からいうと、絶対に接種するべき以外の方はワクチンを使わないほうがよいと考えます。サンパウロ州の下記の地図の左側(明るい色)に①在住(註2)、または、②ブラジル各地の黄熱予防勧告が出ている地域(註3)の森林部や農村部に出張や旅行をする、この二つの状況のみ予防接種が必須だと考えられます。本連載読者の皆さんのほとんどは該当地域に在住されていないので出張や旅行が対象になりますが、「行くかも知れない」程度でなく「実際行かれる」場合予防接種を受けてください。現地に入る10日前に済ますのをお忘れ無く。医療の現場では黄熱以上にデング熱が気になります。その理由は発症数が圧倒的に多く、サンパウロ市内でも罹患可能であるからです。

  • 1http://www.pubanzen.mofa.go.jp/info/info4.asp?id=259
  • 2:左側の市町村名リストは次のサンパウロ州健康局の勧告を参照:ftp://ftp.cve.saude.sp.gov.br/doc_tec/ZOO/fa250210_recomendacao.pdf
  • 3Acre, Amapá, Amazonas, Pará, Rondônia, Roraima, Distrito Federal, Goiás, Tocantins, Mato Grosso do Sul, Mato Grosso, Maranhão, Minas Gerais, São Paulo(一部), Bahia, Paraná, Piauí, Santa Catarina, Rio do Grande do Sul.

『黄熱もデング熱もネッタイシマ蚊によって媒介されるウイルス性の感染症なのだな。黄熱のほうが致死率が圧倒的に高い。 リオで黄熱の流行で渡航禁止になるなど第二次世界大戦前までブラジルの都市部でもかなり黄熱が多かった。都市部で壊滅できたのは実はワクチンのお陰ではなく、蚊の駆除がポイントだったのだな。ブラジル人ではOswaldo CruzAdolfo Lutzなど現在感染症系研究所の名称になっている医師達が活躍したのだ。これにより黄熱のウイルスは森林部に追いやられたのだが、蚊は今度は都市部で流行するデングを運ぶようになった訳だな。これには都市部の拡大と地球温暖化のため蚊媒介性疾患の分布拡大の可能性があるという学説がある。どっちにしても、蚊に刺されるのを防ぐのが予防の重点になる。つまり:①蚊の多い所に行かない(ブラジル沿岸部、気温が高いので多い)②刺されないようにする(虫除け剤を塗布あるいは服用、服装、蚊が食事をする時間帯に外出しない)の二点だろな。絶対数としてデング熱のほうが感染しやすいぞ。ちゃんと治療すればまず助かるので、海などにいって、蚊にさされて、1週間ほどしたら高熱、頭痛などがでるようであればすぐに受診しましょう。』


心と体は切り離して診られないだろうが

By: Kazusei Akiyama, MD


2010年03月

今月のひとりごと:『心と体は切り離して診られないだろうが』

そろそろ季節の変わり目です。毎日気温が変わり、雨が降ったり、暑かったり、寒かったり、鬱陶しいお天気です。「鬱陶しい」とは「晴れ晴れしない」のほかに「気分が重苦しい」意味がありますね。今回はこの「うつ」について考えてみます。医学で「鬱」が分類されるのは精神および行動の障害で、いわゆる精神科領域です(註1)。

  • 1:①気分障害のうつ病;②神経症・ストレス性障害の不安うつ障害;③小児の行為および情緒の混合性障害の抑うつ性行為障害;④産褥に関連したうつ障害。

『うつの分類については心の病気であるとか脳の病気であるとか、生物的成因や心理的成因など現時点でも諸説あるが、簡単に分けると、躁鬱病(最近では双極性感情障害と呼ばれる)のようなかなり重篤な症状がでるものと、ストレスや自律神経失調症に関連するうつ状態に分類できると思う。前者の有病率(註2)は日本人で約2%であるが、実は病態があまりにも広範囲にわたるので調査しにくい後者が圧倒的に多い(一般人口の25%という調査もある)。ところが日本ではうつ=精神科=きちがい科という構図ができあがっていたので、後者の「ちょっとした」うつ状態ではなかなか精神科を受診できなかった・しなかった・したくなかった。それで1996年から「心療内科」なるものが標榜できるようになったのだな。この名称は日本にしか存在しない。一部の「専門家」からは心身症を治療する内科で精神科ではないといってるが、この科だったらかかりやすいのであればいいじゃないの?』

  • 2:有病率:ある時点で対象人口に見られる患者数。この場合100人に2人。

地域医療や一般内科の診療の実態ではうつ状態(註3)がよく見られます。最近の生活状況ではストレスになることが多かったり、あるいはそのために自律神経失調症などになるためではないかと思われます。そのため、単なる風邪のような身体的症状を訴えて来られても精神面も診る必要があると筆者は考えます。反対に精神的症状をきたす器質的疾患(註4)もあるので、一概に精神病であるとは言えません。精神的症状がある場合、必ず器質的原因を除外した上でしか精神障害とは診断できません。器質的疾患であれば、原因を治療すれば(可能であれば)うつ自体も良くなります。精神障害であれば、必要期間投薬したり、カウンセリングを受けたり、東洋医学的治療をしたり、いろいろアプローチができます。

  • 3:一過性のストレス性障害(急性ストレス障害、適応障害、心的外傷後ストレス障害など)、自律神経失調症、パニック障害、恐怖症性不安障害、心気障害、心因性や内因性うつ、など。
  • 4:一番多いのが甲状腺疾患。副腎や副甲状腺疾患。脳血管障害。パーキンソン病。脳腫瘍。膠原病。重金属中毒。

『うつの症状(註5)はつらい。日本人的に根性論で克服するのもいいけど、治療したほうが楽じゃないの?引きこもったりしてないで。とにかく症状が2週間以上つづくようだとなにかがおかしいから医者に診てもらいましょう。』

  • 5:①抑うつ気分(気分の落ち込み、いやな気分、空虚感、悲しさなど);②興味・喜びの喪失;③食欲や睡眠の増減

夏のお腹は意外と冷えているのだな

By: Kazusei Akiyama, MD


2010年02月

今月のひとりごと:「夏のお腹は意外と冷えているのだな」

南半球の暑中のお見舞い申し上げます。暑いですね。今年はまたよく雨が降ります。いろんな所で浸水して大変です。筆者の診療所でも屋根が雨漏りして困ってます。この季節、腹痛で受診される患者さんが増えます。夏期の前半多いのは食あたり系の下痢ですね。気温が高いので食材そのものやこちらでよくあるビュッフェ形式の食べ物が傷む確率が高くなります。

「とにかくサラダバーが危ない。マヨネーズサラダは絶対にやめといた方がいいぞ。マヨネーズには卵が原料として入るが、ブラジルの卵はサルモネラ菌という大腸菌の一種に感染している可能性が高い。繁殖するのに丁度いい温度になるのだな。もう一つ夏に避けた方がよいのが貝類だな。貝は海水のフィルターなのだな。海辺人口が増えるこの時期は海水汚染(はっきり言うと排便汚染)がひどいので汚れを体内にため込んだ物を食べる気にはならないよな。コレラ菌が属するビブリオ属は海水での生存期間が長いので下痢の原因になりやすい  (註)。ゲロゲロ。」

そして夏期後半多いのは意外と冷えからくる腹痛・下痢です。これは冷たい飲み物や冷やし○○など温かくない料理を摂る機会や身体が冷える状況(クーラー、服装、プールなど)が増えるためです。3ヶ月ほど冷やした生活をしていると夏の終わりに胃けいれんや下痢をおこすことがあります。

「暑いから食欲が無い、と冷たい物を食べてると、内臓が冷え、消化機能が低下し、さらに食欲が落ち、また冷たい物を食べる、の悪循環に陥るのだな。日本では伝統的に暑中の冷やした料理があるけど、井戸水程度の温度が冷やしたもの(15℃前後)だったのだな。今はクーラーで20℃代前半に空調した環境で冷蔵庫や氷で冷やした物(5℃前後)を食するからとんでもない。病気をつくっているようなものだな。夏は温かい物、栄養がつく物を口にするのが健康の条件だろう。土用のウナギとはよく考えたと思う。」

ということで、生もの、冷えたものには留意して元気に夏を過ごしたいものです。Caféにいったらレーコーではなくホットを頼みましょう。

註:感染症系の下痢はほとんどが「感染性胃腸炎」であり、ウイルス、真菌、細菌、原虫、寄生虫のうちどれでも原因になりうる。一般的には重症化しないが小児や老人には脱水症を起こすことがあるので注意が必要。急性の症状をおこす代表的な微生物:サルモネラ菌、カンピロバクター菌、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌、ノロウイルス、ロタウイルス。コレラ、赤痢、腸チフス、O157は重篤な症状をおこし致死率が高いので別分類される。


Abstract (2009): Marcadores de etnicidade para determinação de população.

Guaecá. São Sebastião. Caju©2010

By: Newsroom CKA

秋山医師が2009年度のEncontro Científico do Fleuryで口演発表した際の要旨。「人口の同定に使う人種マーカー:邦人用健康診断への将来性」


Abstract: Marcadores de etnicidade para determinação de população: perspectivas para o Check-up Nippon.

Autores: Kazusei Akiyama, MD e André Brooking Negrão, MD.

Marcador de etnicidade para determinação de população.


 

日焼け止めを過信すると怖いぞ

By: Kazusei Akiyama, MD


Wave and Sun. Praia Cacimba do Padre. Caju©2009

2010年01月

今月のひとりごと:「日焼け止めを過信すると怖いぞ」

夏になりましたね。今月は日焼けの話です。121日付けのブラジルの全国紙E新聞で「市販の日焼け止めの消費者テストをしたところ、2商品しかパスしなかった」といった記事が記載され、物議を醸しました。日焼けが好きなブラジル人でも気になる話題なわけです。なにしろ 米国では過去40年の間に皮膚ガン(註1)の発症率が3倍以上であるとのデータが示すように、オゾン層の破壊など環境の変化で太陽光の強さは年々増してきてるように思われます。日本人(黄色人種)の皮膚癌発症率は欧米白人(ピンク色人種)ほどではないですが、リスクが増えているのは間違いないでしょう。ほとんどの皮膚ガン(95%、基底細胞癌)は比較的予後良性ですがならないにこしたことはないですよね。 皮膚ガンもさることながら、極端な日焼けは皮膚の老化と直結します。

  • 註1.皮膚ガンの種類と特徴
    1. 有棘細胞ガン:表皮の有棘層から発生する。UVBの影響が大きい。比較的日本人に多い。転移あり。
    2. 基底細胞ガン:皮膚の基底層から発生する。ほとんど頭部に発生し、加齢と共に増える。ブラジル人はほとんどこの種類。転移はしない。
    3. 悪性黒色腫(メラノーマ):メラニン色素を生成する細胞から発生する。紫外線とあまり関係がない。非常に悪性で早い進行と転移が特徴。

「ここブラジルでも例外ではなく、現時点で一番よくあるガンなのだ。当地のモレーナな生活スタイルを続けると、ガンになる可能性ではなく、確実に人生のある時点で皮膚ガンになるのだな。ほとんどが命取りにならないからあまり深く考えてないぞ。なのでブラジル人は皮膚老化のスピードが恐ろしく早い。40代でぼろぼろ、ざらざら。30代でも遠くからの見た目がパスする程度かな。 日焼けに関する概念が違うブラジル人と日本人の女性を皮膚を比較すると一目瞭然だな。ただ、ブラジルのビーチに行った日本人が服を着込んで日焼け止め対策をしているのも異様に目立つし色気よりお肌が大事なわけですな。南米は特に紫外線が強いのはわかるけど。 どこかに良い妥協点は無いのですかね?」

気になる日焼け止めのパフォーマンステストですが、UVカット効果の持続時間や、耐水性・耐熱性に問題あり、効果自体が無かったわけではありません。結論からいうと、どれだけ良い商品でも時間がたつにつれて効果が減ってきますので、「まめに塗り足す」のがポイントになります。ブラジルで市販されているFPS30(註2)で25レアル前後の平均的なものであれば、2時間以内おきに塗り足す必要があります。この季節、海水浴など野外での活動とともに日焼けの機会が増えますので、特にお子さんたちには実施してあげてもらいたいものです。

  • 註2. FPS 日本のSPF値と同じ。値が大きいほどUVカット効果が大きい。

FPS値が高いものは値段がやたらと高いし、これは物理コーティングしているのでは?と思うほど粘っこくて使いにくいし、値段に見合ったパフォーマンスがあるのだろうか?2時間たつとどうせ効果が半減しているのだから、使いやすいFPS30あたりを何回も使ったほうがよいのではないかな。30以上を使わないといけない人は、日光浴はするなよ。」