世界最強のヤブカ誕生だな

By: Kazusei Akiyama, MD


2016年01月

今月のひとりごと:『世界最強のヤブカ誕生だな』

謹賀新年。22人の読者様、いつものご愛読、深謝です!今年もよろしくお願いいたします。今年はさらに暑くなるそうで、原因はエルニーニョ現象だと説明が出てます。10月に診療所を移転したのですが、当地ではよくある、工事が納期に終わらなく、エアコンなしの状態で業務開始しました。それで、一番暑い日に診察室内が35℃になり、仕事になりませんでした(註0)。さて、今月もヤブカの話しです。毎年、年末年始に感染症の話しが多いですが、これは暑さと関係があるのですね。通常、1月によく見る疾患は下痢で、これは暑さで食べ物が傷んだり、海に行って汚染された水などで感染をおこしたりが原因でした(註1)。これらの危険性は変わってないのですが、最近はヤブカに媒介される感染症がこの時期警戒しなければならない疾患の一番になった感じです。

『つまり、「デング熱」だな。ところが、ブラジルでは同じ蚊が「チクングニア熱」を媒介し、2014年より警戒対象になった(註2)。それだけでも十分と思えるのに、今年から「ジカ熱」も媒介するようになった(註3)。これは3つとも同じフラビウイルス属であるから同じ媒介方法になるのだな。この3種類のウイルスが同時に伝染するのは世界で初めてらしい。世界最強のヤブカだな(註4)。日本でも去年デング熱が出現したが、世界中でこの手のウイルスは猛威を振るっているのは間違いないだろう。原因の一つに挙げられるのが、地球温暖化だな。蚊は暑い時に繁殖する(註5)。また、関係するのが、都市の巨大化で周りの森林が伐採され、蚊が街に住むようになったり(註6)、街が大きくなり、周りの森林に迫り、森のサルに感染をおこしていたウイルスが、ヒトと接触するようになったこともあげられるだろう(註7)。』

  • 註2:2014年12月でチクングニア熱についてひとりごとしてます。
  • 註3:先月2015年12月のひとりごとをご覧ください。
  • 註4:蚊の名称はすでにメディアでおなじみの「Aedes aegypti」和名ネッタイシマカ。
  • 註5:だから日本の夏の風物詩は「風鈴、うちわ、スイカ、蚊取り線香」でしょう?
  • 註6:デング熱のパターンとされてます。元々ネッタイシマカは黄熱ウイルスを媒介するもので有ったが(今でもします)、熱帯雨林と密接する黄熱ウイルスは森林伐採のため都市部では減ったものの、残った蚊がデングウイルスを媒介するようになった説がある。
  • 註7:これがジカウイルスのパターンです。街が野生に迫る現象ですな。北米で街に熊が出没するのもこれが主な原因とされている。

原因はともあれ、実際ジカ熱が増えていることは間違いないですし(註8)、先月のひとりごとで緊急テーマで扱った「小頭症出産」と関連が除外できないので警戒が必要と考えます。12月12日までのブラジル保健省の統計では20州、549市で2401件小頭症出産があり、そのうち134件でジカウイルス感染が確認されてます。但し、12月4日より小頭症の定義が頭囲33cm以下であったのが、頭囲32cmに変更されてます。ので、前の定義だともっと件数が多いでしょうね。この騒ぎで「妊娠延期勧告」が出てます。まだご覧になってない方はぜひ先月のひとりごとを見てください!

『この最強のヤブカの出現は14年前から続く現在の連邦政府が蚊の駆除を怠ったとの一説がある。実際そうだろう、12月5日に13年ぶりにヤブカ撲滅キャンペーンをルセフ大統領が打ち出した。その時のスピーチで大統領がジカ熱に付言し、こう仰った:「蚊が卵を産みます。その卵の中にウイルスがいて、その卵がウイルスを伝染するのです(註9)」。蚊の卵が飛ぶのだろか?この政府、大丈夫じゃないよな。当てにしないほうがいいです。自分の健康や安全は自分で守りましょう。』

  • 註8:ジカ熱はあまり症状がでません。感染しても2割程度しか症状がでないうえ、症状も強くでない。この6ヶ月でブラジル全国で50万人乃至130万人感染と推定されている。
  • 註9:うそです。蚊の唾液腺にいるウイルスが吸血時に体内に入るのです。

非常に重要ですので、再度妊娠延期勧告の件を記載します。

❶既に妊娠している女性:ノルデスチ地方、特にペルナンブッコ州に旅行しない。また、蚊に刺されないようにする(方法はデング熱と同じです、2010年4月号2014年12月号2015年5月号のひとりごとをご参照ください)。

❷近々妊娠を考えている女性:蚊が媒介するため、蚊の多い夏以降(当地来年の3月以降)の妊娠を勧告。これにより、胎児に影響が出やすい始めの3ヶ月を避けられる。もちろんノルデスチ地方は避ける。

❸妊娠を考えているが、急いでいない(急がなくてもよい)女性:状況がはっきりするまで、避妊を勧告。