By: Kazusei Akiyama, MD
2014年08月
今月のひとりごと:『ボロ負けしたほうがモテるんだ…』
ようやくFIFAのワールドカップ2014が終わり、1ヶ月間麻酔状態であったブラジルの社会が麻酔から覚めてきたところです(註1)。このコラムの22人の読者様はどのように1ヶ月間すごされたのでしょうか?暴動が起こるだの、社会インフラができてないから大失敗するだの開催前はさんざんな見立があったブラジル杯はなんとか無事に終了はしたのですが反対に前評価が悪かったために「なんだ、ちゃんとできたじゃない」とか「「予想に反してすばらしい出来であった」とかの意見が多かったですね。しかし、これには当地で開業している筆者から言わせてもらうと、「ブラジル全体が1ヶ月の休みにしたから(なったから)なんとか上手くいった」としか言いようがないと思います。もちろん正常な社会経済活動はなかったし、経済的なダメージも膨大なものなったのは間違いないでしょう(註2)。
でも、「…なんか理不尽…」というのが、ブラジルで開催されたワールドカップが終わってからの心境でした。ブラジル人の心境ではなく、筆者のです(註3)。もちろん説明が必要です。準決勝戦でドイツに7X1で惨敗して、その後3位決定戦でオランダ3x0でダメをだめ押しされた後、セレソンの選手達を指しての女性のコメントが「気の毒」から「かわいそう」をとおり「アーよしよし、ダッコしてあげたい」まであったのですね。その上で、「母性本能をくすぐられた」とか「だめな息子を戦場に送り出す母の気持ちはこうなのか」とか女性達の説明を聞いていると理不尽だと思う反面、「はは~、なるほど」と結構納得した面もあったのです。男性と女性は色々違う!と言うまでも有りませんが、その違いをはっきり見せて(見せつけて)くれた大イベントでしたね(註4)。
『それでそのくすぐられる「母性本能」とやら、どういった物か?医者として、あまり疑問に思ってなかったのですが(註5)、調べてみるとすごく議論がある(社会人類学的見解や心理学的見解)のと、恋愛の手段としての位置づけがある(母性本能を利用して女性にモテる)のが見つかった。結論からいうと、前者はピントがずれているのでは?後者は今時の「草食性男性x肉食性女性」なる時期を航海するための手段?と思ったぞ。この後者の「今時の現象」があるため、または至ったための前者の議論でもあるけど。要するに、母性本能があるのかないのかの大議論があるのは本能のような非理性的な生物現象を人間の理性で勘案するからでないかと思う。母性本能を「もっているだろう(あるだろう)」「もっている(ある)」「もっていない(ない)」「もちろんもってる(もちろんある)」などの議論は医学的観点からいうと不毛で無駄であると思うけど。それで少子化や晩婚、未婚などの議論に突入するのだな。
理性的な母性、またはそれに関する議論、つまり、母親になるか(註6)どうかの「理性的母性」の話とごっちゃになってる(註7)あるいは、学習するものである(から学習したものがもってる)とか。医学的にいうと「ほ乳類と鳥類の雌に見られる、生理的な、繁殖と養育に関する反応であり、人類にも認められる」だと愚考する。』
こんな事「も」考えさせられるW杯でした。さて、仕事仕事!
註1:そう、麻酔状態です、陶酔状態の誤字ではありません。
註2:例えば、期間中懸念されていた空輸は問題なく稼働したわけですが、これはビジネスユーザーが激減したためと説明されている。ホテル業界でも結局空室が結構多かったのもそのためとされている。
註3:ブラジル人の心境は一言でいうと、「唖然」でしょう。
註4:ここまで負けるか。
註5:本能は存在するから、また、日常的にそれが観察できるから。良い例が赤ん坊です。おっぱいに吸い付くとか、不快であれば泣くとか。
註6:「母に」なるか、なりたい、なりたくない、ならない、なれない、ならないといけない、なるだろう、なるのか、などなど、延々と続くぞ…
註7:他にも母性があり、混同されているのが判る:母性(maternity)、母性本能(maternal instinct)、母性愛(maternal love)、母性的行動(maternal attitude)。これらは定義が違うぞ!