By: Kazusei Akiyama, M.D.
2020年11月
暑かったらクーラーつけたいですよね。
今月のひとりごとはどちらかと言うと24人の読者様のうち、ブラジルまたは南半球におられる方むけです。題名からも判明する様に、これから暑くなる季節と関係する話です。日本など、北半球で過ごされた方は、もう既に夏が過ぎた場合はどうだったか体験を共有していただけたら嬉しいです。リオはともかく、サンパウロは元々夏期は乾燥していて暑くても気温が32度くらいまでで、日陰に入れば過ごしやすい所でした(註1)。しかし、近年の地球規模の気象変動のためか、当地でも気候が変わってしまい、夏は高温多湿になってしまいました。そのため、数十年前までは皆無であったエアコンの普及が目につきます。ブラジルでエアコンと言えば、リオを連想したものです。熱帯地方の海辺の街のため、高温多湿で当たり前です。市内に走っているバスはキンキンに冷房が効いてます。それが今年の夏は過去形になると発表されてます。理由はコロナ対策でバスなどの公共交通機関は窓を開けて走り、エアコンの使用は禁止になったようです(註2)。この措置は閉めきった場所で密にならないようにするのもありますが、実はコロナ禍においてはエアコンは問題ありなのです。
- 註1:その気候が筆者がサンパウロに住んでいる大きな理由でした。
- 註2:窓が開かないバスなどもあったはずですが、その場合どうするんですかね?
コロナ対策をおさらいしてみると、頻繁に手洗い、マスク使用、3密を避ける、そして感染リスクを高めやすい行動を避ける(一覧)があります。この内の「3密を避ける」に、「換気する」があります。コロナウィルスは飛沫感染するので、ウイルスを含んだ飛沫が浮遊している空気を除いてしまいたいので換気する訳です。厳密に言えば、外部と遮断されてまったく一人でいるのであれば、換気なしの密室でも問題ないのですが、実際はそうはいかないので新しい空気の入れ換えは必要です。入れ替えというより、排気が重要です。皆以外と錯覚しているのが、エアコンで換気できているという事です。できるモデルもありますが、殆どは換気しません。一般的に家庭で使われるエアコンは室外機と室内機があり、冷房の場合、前者で熱を放出し、冷たくなった冷媒ガスを後者に送り(註3)、室内機を冷やし、後者はその冷えた空気を室内に循環させています。したがって、エアコンを使うと、実際は室内の空気をかき混ぜているだけで、換気は行われません。
- 註3:厳密にいえば、冷媒ガスを気体にして送る。
『この様な環境で、飛沫が浮遊すると、エアコンに吸い込まれ、部屋中に広がっていく。中国ではレストランでエアコンが飛沫を拡散して集団感染がおこった報告が今回取り上げている問題の良い例だな(註4)。2月に日本で大騒ぎになった豪華客船の集団感染も空調システムを介した可能性が大きい。ウイルスは飛ぶだけではなく、室内機に付着し、一定時間活性を保つので貯留されてしまい、感染機会が増えるのだな。新型コロナウイルスは低温に強いし。なので、室内の空気を排出せよと言われるのです。』
エアコンつけないと熱中症で死ぬような環境になってきましたので、では暑い中、どの様に換気するのか?窓やドアを開けて、空気の通り道を作らないと換気になりません。窓が1ヶ所しかないなど通り道が作れない場合は、扇風機やサーキュレータで強制排気します。部屋の中の空気をかき混ぜるのではなく、窓に向かって風を送るようにします。首振りはしません。そしてエアコンは止めません。エアコンは電源を入れて立ち上がる時に一番電力が必要なので、換気の度に止めたりするとかえって電気を使います。換気のタイミングはこまめにするほうが効果的です。つまり、1時間に1回15分の換気より、5分3回のほうがいいです。台所やトイレの換気扇をつけっぱなしにしておくのはどうか?トイレのは容量不足だと思われます。台所の換気扇はそれなりに排気能力がありますが、新しい空気が入るようにしないと効果ありません。可能であれば、空気の通り道を作る方法が一番効果的と考えます。
エアコンはコロナ禍でこの様な問題がありますが、コロナ以前に病気と関係がある、注意が必要な装置です。空調システムは機能上、ホコリやカビが溜まりやすいものです。一番関連がある病気は「換気装置肺炎」と呼ばれるもので、空調器にカビが増殖し、それを吸入する事で過敏性肺炎が発症します。カビだけではなく、細菌感染症であるレジオネラ菌(註5)による肺炎もあります(註6)。ビルなどの中央式空調は個別式よりメンテナンスが大がかりなので、きちんとしてないため病気と関連しているケースを医療現場でみます。
- 註5:Legionella pneumophilaなど、レジオネラ属菌。
- 註6:レジオネラ感染は個別式である家庭内のエアコンでは起こりにくい。ビルなどに使われる熱源機器を一カ所に集中設置したセントラル空調方式で報告されている。
『また、俗に「クーラー病」というのもあるぞ。これは、冷房のため、室外との大きな寒暖差が生まれ、体温をコントロールする自律神経が乱れてしまうためにおきる症状(註7)だな。元々自律神経が失調気味だとなりやすい。筋肉が少ないし、冷え症になりやすい女性の方がかかりやすい。クーラーをいれた部屋で冷たい飲み物もNGだな。』
- 註7:クーラー病の症状:発熱、吐き気、頭痛、下痢、悪寒、肩こり、鼻炎、喉の痛み、発汗、腹痛、眠気、めまい、足のだるさ、筋肉痛など。
エアコンって何気なく使っているけど、注意と定期的な掃除が必要な装置なのです。換気装置肺炎や換気装置感染症はエアコン以外に加湿器でもおこりますので、2012年9月にひとりごとした「加湿器はこわいぞ!」もあわせてご覧ください。
一覧:コロナ感染リスクを高めやすい行動7類
- 飲酒を伴う懇親会
- 大人数や深夜に及ぶ飲食
- 大人数やマスクなしでの会話
- 仕事後や休憩時間
- 集団生活
- 激しい呼吸を伴う運動
- 屋外での活動の前後