By: Kazusei Akiyama, MD
2018年8月
心にグッときますね
FIFAワールドカップも終わり、ブラジルの社会と経済生活が正常に戻りました(註1)。今年は総選挙がおこなわれるので、残念ながら”平穏な生活”は数週間しかありませんね。選挙運動が始まれば、ウソの垂れ流しに曝され、左派と右派の攻勢の板挟みになる生活が待ってます…
- 註1::残念な事に、やはりコッパ・ビアアグラでしたね… 先月号をご覧ください。
このところ、このコラムは話の内容が医学専門的すぎて面白くないと24人の読者様からご指摘いただきました。確かに一年前から遡ってみると医学の解説書みたいになっているところもあり、反省の材料が多々あります。そこで、どの様なテーマがいいのか、広く読者様に応募しますので、hitorigoto@kazusei.med.brまでご一報いただければと思います。従って、今月は全然医学とは関係のないひとりごとです。
2017年にインターネットで炎上したAna Vilela作詞作曲のブラジル音楽、Trem Bala。直訳では「弾丸列車」、新幹線とか特急列車の意味ですが、ブラジル人の心にグッときた歌詞で、色んなカバーが出てます。その内、筆者が一番好きなのが、Música Caipiraジャンルで活躍しているMayck&Lyanの二人(図1)(註2)のバージョンです。
- 註2:「マイクとリアン」と読みます。
図1:Mayck&Lyan
カイピラ音楽は近年Música Sertanejaとも呼ばれ、いわゆるブラジルの内陸、「田舎の音楽」です。日本人にブラジル音楽というと、やはりボサノバとサンバの連想になると思いますが、実はこの田舎音楽がブラジルでは一番売上げが大きいのです。Caipiraとは「サンパウロの田舎者」の意味の言葉ですが、このサンパウロ、昔はとてつもなく広大な大きさなのです。図2でわかるようにアマゾン地方が始まるあたりまでサンパウロだったのです。
図2。1709年時点でのブラジルの行政区画
ここで生まれた田舎音楽はポルトガルの10弦ギターを原点にしたヴィオラ・カイピラ(viola caipira)の伴奏を使い、基本的にペアで歌い、ホモフォニー(homophony)(註3)のデュエットボーカル(註4)になります。歌詞の内容はブラジルの田舎の生活模写や自然の秀美が主でしたが、近年では恋愛や人間関係などのテーマも増えているようです(註5)。今回紹介しているペアは高音(テノール)が一般的なMúsica Caipiraの中、低音で珍しく、筆者は好きなアーティストです。
- 註3:最上声部が独立したリズムによる主旋律となり、他の声部が伴奏となっている楽曲。
- 註4:同性のペアが一般的。男女の異性ペアは珍しい。
- 註5:これは近年都市部でもこの音楽のジャンルが浸透してきているので、テーマも変化してきていると言われてます。
Trem Balaの歌詞と筆者の和訳は次ぎのとおりです。インターネットで閲覧できますので、ご存じない方は是非一度この様なブラジル音楽もあるのかと、ご覧いただければと思います。
Mayck&LyanのTrem Bala:https://youtu.be/5vyIl4anjcM
Ana Vilelaのオリジナルはこちら:https://youtu.be/sWhy1VcvvgY
ポルトガル語の歌詞はスペースの都合でピンドラマには記載されてません。
TREM BALA
(Ana Vilela)
Não é sobre ter todas as pessoas do mundo pra si
É sobre saber que em algum lugar alguém zela por ti
É sobre cantar e poder escutar mais do que a própria voz
É sobre dançar na chuva de vida que cai sobre nós
É saber se sentir infinito num universo tão vasto e bonito
É saber sonhar
E, então, fazer valer a pena cada verso daquele poema sobre acreditar
Não é sobre chegar no topo do mundo e saber que venceu
É sobre escalar e sentir que o caminho te fortaleceu
É sobre ser abrigo e também ter morada em outros corações
E assim ter amigos contigo em todas as situações
A gente não pode ter tudo
Qual seria a graça do mundo se fosse assim?
Por isso, eu prefiro sorriso e os presentes que a vida trouxe pra perto de mim
Não é sobre tudo que o seu dinheiro é capaz de comprar
E sim sobre cada momento sorriso a se compartilhar
Também não é sobre correr contra o tempo querer sempre mais
Porque quando menos se espera a vida já ficou pra trás
Segura seu filho no colo
Sorria e abrace seus pais
Enquanto estão aqui
‘Que a vida é trem-bala, parceiro
E a gente é só passageiro prestes a partir
Segura seu filho no colo
Sorria e abrace seus pais
Enquanto estão aqui
‘Que a vida é trem-bala, parceiro
E a gente é só passageiro prestes a partir
トレン・バーラ
アナ・ヴィレラ
この世界の全ての人を自分のものにすることじゃなくて
どこかで誰かが自分の事を守ってくれる人がいることなんだ
歌った時に自分の声以上を聞くことができることなんだ
人生の雨の中でダンスすることなんだ
この広大で綺麗な宇宙で限界をつけずに夢を見ることなんだ
信じる事についての詩に価値を感じることなんだ
世界の頂点に立って勝ったと知ることではないんだ
登る時に進んだ道が自分を強くした事を感じることなんだ
誰かを受け入れて、そして他の心にも住処を作ることなんだ
それでどんな時でも友達を持つことなんだ
僕たちは全部になれないんだ
そうであったらこの世界は面白くないでしょ?
だから僕は、笑顔と人生が自分の周りにもってきてくれた贈り物を選ぶのさ
お金が買える事についてじゃないんだ
共有出来る笑顔とあらゆる瞬間についてなんだ
時間に逆らってもっと求めることではないんだ
だって気付いたら人生はもう置いて行かれてるからさ
子供を抱っこして
親がまだここにいる間に笑顔で抱きしめるんだ
人生は特急列車なんだよ
僕たちは出発寸前の乗客でしかないんだから
子供を抱っこして
親がまだここにいる間に笑顔で抱きしめるんだ
人生は特急列車なんだよ
僕たちは出発寸前の乗客でしかないんだから