By: Kazusei Akiyama, MD
2017年11月
今月のひとりごと:『世の中ピンク一色でしたね。』
3ヶ月連続の乳ガンのはなしです。このコラムを始めて一番医学的な反響が大きかったテーマでした。丁度10月が乳がんに関する啓蒙の「ピンクリボン運動」(註1)の月であったのも絶妙なタイミングだったのでしょう。このコラムの24人の読者様も色んな所でピンクご覧になったでしょう(註2)。前回2回のひとりごとは技術的な事項が多く少し混乱するとの意見があったので、「乳がんとどう向き合うか」をまとめてみます。
質問:「乳がんが心配になった。どうしたら良いのか?」
回答:『とにかくかかりつけ医にご相談ください。そこでリスクの同定をし、必要であれば専門医が紹介されます。』
質問:「乳がんに関し自分で出来る事は何か?」
回答:『三つあります。①自身がハイリスクであるか同定をする(ハイリスクに関連する項目はひとりごと先月号のボックスを参照ください。ハイリスクの方は必ず専門医を受診してください)。②定期的(最低月一回)に自己検診をするように習慣つける(自分の乳房に馴染んでおくと変化があると直ぐに判る。自己検診の仕方はひとりごと9月号を参照ください。)。③乳がんの増加の原因の一つとされる食事に注意する(食の欧米化、現代食の内容など(註3))。』
質問:「どのような変化が良くないか?」
回答:『次のような変化が見つかった場合、医師に相談してください。』
1.しこり
2.皮膚が厚くなる
3.皮膚に溝が出来た
4.乳頭に外皮が出来た
5.乳頭より分泌物
6.痛み
7.乳頭の陥没
8.静脈が浮く
9.出っ張り
10.皮膚の潰瘍やびらん
11.ミカンの皮のような皮膚
12.乳房の形や大きさが変わった
註1:ピンクリボン運動:毎年10月をキャンペーン月とし、「乳がんに対する意識を深める」を啓蒙する世界的運動。2000年代より一般的に認知されるようになった。リボン運動はエイズ撲滅の赤リボンが元祖とされる。どのガンでもそうだが、早期発見が死亡を回避する一番の状況であるため、この運動も「早期発見を啓蒙する」ものである。ピンクリボン運動の成功を見て色んな疾病に関する「色運動」が出ている(他のガンや緑内障、自閉症、線維筋痛症、SLE、肝炎、脊椎側湾症、多発性硬化症、自殺、先天性梅毒、糖尿病等)が複雑化しすぎたのではないかと指摘がある。早期発見により、死亡率を下げるのも重要であるが、このキャンペーンは2つの大きな問題・弱点がある:❶発見と治療に焦点・宛先をあてた物で、「ガンにならないようにする生活」を啓蒙する訳ではない。❷キャンペーンに便乗した商品や企業が後を絶たない、つまり医療とは関係のない全くの商業主義。また運動に多大な寄付をしているから企業姿勢が正しいとは言えない(有名な件では、某大手化粧品メーカーが初期から運動に参加しているが、自社が販売している発ガン性物質入りの製品と相異なるのではないかと指摘がある。)。この運動により、乳がんになった女性は「検診しなかったから悪い」といった見解になる可能性がある。
註2:自動車レースのF1のタイヤまでピンク色だった!
註3:日本人の食が欧米化したため日本人女性に増加があるが、元来の食事をしている欧米人女性にも増えているので、やはり内容も問題があると考えられる。