子宮筋腫も欧米化の影響だろう。

By: Kazusei Akiyama, MD


2015年04月

今月のひとりごと:『子宮筋腫も欧米化の影響だろう。』

先日ブラジル全国で大規模反政府デモがあり、サンパウロでは100万人以上が集まりました。このコラムの22人の読者様も出席されたのでしょうか?汚職反対、騙すのを止めろ、ちゃんと仕事をしろ、といった内容のデモだったのですが、これってデモして言わないといけない事項なんですかね?まあ~、開業医のひとりごとです。今月の本題とは関係ありません。今月は大変多く見られる子宮筋腫を取り上げます。

『子宮は大まかにいうと3層あって、外から、漿膜、筋層、内膜があり、この筋層内に発生する良性の平滑筋腫瘍を筋腫という。繁殖期の女性の20%に発症し、40代に好発するのだな。臨床の現場では、40歳前後の女性の3人に1人の割合ぐらいで観るぞ。できる原因は分かっていない。大抵が無症状なので、健康診断とか、いわゆる直接筋腫と関係のない医療行為で観察される事が多い。女性ホルモン(エストロゲン)に依存するため、これに反応して大きくなる。そのため、閉経すると縮小する。筋腫そのものは良性であり、悪性化することは希なのだな(註1)。筋層から発生して、どの方向に大きくなるかで症状が変わってくる。外側にできる漿膜下筋腫はスペースの多い腹腔内にあるので、大変大きくなりやすく(註2)、症状が乏しい。粘膜下筋腫は反対に子宮の内側にできるので、不正出血や月経困難、不妊症(註3)の原因になり、小さくて症状が強いのが特徴だな。一番よく見る筋層内筋腫は症状的に多彩で、その大きさや発生場所によるぞ。過多月経やそのための貧血、月経困難など婦人科系の症状以外に周辺臓器を圧迫するほどの大きさになると、排尿障害、排便障害、腰痛などを起こすことがある。良性の腫瘍なので筋腫そのものは命に関わるものではないが、どの程度症状があるかで治療が必要になるのだな。』

この腫瘍は増加傾向にあります。これは、健診などでエコー検査が普及したため、発見される機会が増えたのもありますが、生活仕様が欧米化したため(註4)、女性ホルモンに影響される人生期間が伸びたため(註5)とされてます。筆者は食生活なども影響があるのではないかと思います(註6)。

『治療はどれだけ症状があるか、妊娠が必要かの二つが大きなパラメーターだな。根本的とされる治療は子宮全摘出なのだが、元の臓器が無くなるから、二度と発生しない(あたりまえだな)。これはもう出産した女性向けだな。全摘が嫌であれば、筋腫核出術、つまり、筋腫だけを切除する方法だが、多数あったり、筋層内筋腫では不可能であることが多い。薬物治療もある。女性ホルモン依存なのでそれを抑える薬を使うのだが、人工閉経になってしまうので、閉経近い場合や手術をする前に腫瘍を小さくするために投与されることが多い。その他、近年では集束超音波療法(註7)や子宮動脈塞栓術(註8)などが開発されているぞ。さらに、漢方薬が有効なのだな。』

ここまで書きましたが、ほとんどの場合、あまり婦人科的な症状がなく、治療は単なる経過観察です。しかし、腰痛や頻尿など一目関係のなさそうな症状のみも多いので、40歳代であればちゃんと受診したほうがよいのではないかと考えます(註9)。


註1:悪性化するのは0.5%に満たないとされている。しかし、元から悪性の子宮肉腫や子宮体癌も腫瘍であり、鑑別が必要である。

註2:世界最大の子宮筋腫は52歳のインド人と記録されており、13kg、直径53cmであった!

註3:着床の邪魔をするIUDと同じ効果をするのだな。

註4:疫学的事実として、日本人より欧米人に多い。

註5:女性の成熟が早まった、初潮の年齢が低くなっている。また、ホルモン補充などで閉経が遅くなった。

註6:女性ホルモンそのものや環境ホルモンが食品経由で体内に入ってくる。特に動物性蛋白経由で。

註7:腫瘍を焼く方法だな。

註8:筋腫に血液を供給している動脈に詰め物をして壊死させる方法だな。

註9:50歳代で不正出血や前出の症状がある場合は悪性の可能性が高いので受診は必須だぞ!