By: Kazusei Akiyama, MD
2013年10月
今月のひとりごと:『閉経で考える日伯の違いは?』
ここ2ヶ月、愚痴っぽいひとりごとで大変失礼をいたしました。このコラムの22人の読者様にもちょっとお叱りをいただきましたので、この場を借りてお詫び申し上げます(註1)。今週、友達の婦人科のドクターと話しをしていて、閉経が話題にあがりました。ブラジル人女性と日本人女性のコトの捉え方の違いはあるのかと。
まず定義からです。閉経とは「月経が停止する自然現象」であり、女性ホルモンのエストロゲン産生が劇的に減少するためです(註2)。月経はいうまでもなく生殖と関係があるので、これが停止する事は生殖能力が無くなる事であり、子供が産めるのが大きな特徴である女性の人生では大変大きな転機ですよね。日本人女性の場合、平均50歳で閉経がおこります(註3)。正常とされる年齢帯は平均年齢プラスマイナス5歳で、それ以前の45歳以前の場合早発閉経、それ以降の55歳以降の場合晩発閉経と呼ばれ、一応正常範囲以外なので、関与する疾患がないかなどの精密検査の対象になります(註4)。そして閉経年齢の前後5年間が更年期と呼ばれます。更年期に入ると、ホルモンの分泌が不安定になってくるため、いろんな症状が現れます(註5)。症状の多少は個人差がありますが、ひどいと「更年期障害」と位置づけられ、治療の対象になります。
『今月のお題の答えからいうと、「違いはある」だな。日本人は自然は「従うもの」である捉え方が多いと思う。反面、ブラジル人も含む欧米人は自然は「支配するもの」である考え方ではないだろか?(註6)この概念の違いが閉経では一番つらい更年期障害(註7)に対する態度の違いがでてくると思う。日本人にとって閉経は受け入れるものであるが、ブラジル人にとって閉経は抵抗するものである。前者はいかに「更年期を上手く乗り越えるか」考え、後者はいかに「更年期にならないか」の発想になるのだろう。だから更年期障害の”治療”としてホルモン補充療法、HRT(註8)が開発された。典型的な欧米考え!ホルモンが低下するのが問題であれば、外部から入れる。それで更年期にならない。というか、更年期か更年期でないかよく解らん状態になる。止めると障害の症状が出てきてつらいからいつまで経っても止められない。モラトリアムの一種だな。先送り。でも、5年以上HRTをすると乳ガンの発生が増加するので、ビビりながら薬を使う(註9)。体力のある間に、上手く乗り越えれば良いのに、無くなってからではさらに乗り越えにくくなるのだな。HRT自体は上手く使えば、ホルモン分泌が激変する時期に有効だと思う。反対に「絶対に薬などに頼らないで根性で」解決を求める日本的な考え方もいかがなものか?』
という事で、HRTも視野に入れてもいいでしょう。 バカとはさみと薬は使いようと言いますね(言わない?)。 さらに日本人は「漢方薬」という更年期障害にとても有効な手があるのです。筆者が思うに、更年期には「準備」が必要で、宿題をしてこそじたばたしないでこの女性の大課題をクリアできるのです。女性の宿題は月経、出産、更年期に対してといくつかあると考えますが、これらについては次の機会にひとりごとしましょう。
註1:日本人社会ではそうでもないのですが、当地ブラジルではすっかり医者が悪者にされてしまったので気分が晴れないのです。あ~まだ言ってる!
註2:閉経すると女性ホルモンが完全にゼロになるわけではない。
註3:ブラジル人女性は直近の調査では平均52歳で閉経。
註4:日本の鉄道のダイヤのように正確な現象ではないので、多少ずれても異常のないことがほとんどではあるが、一応そういうことになってるのですな。
註5:「のぼせ」や「ほてり」、異常発汗、不安、いらいら、不眠、倦怠感、耳鳴り、など。
註6:だからこそ自然を保護する「エコロジー」な概念は西洋社会で生まれるのではないか?元々共存、共生していれば「破壊に対する保護」が必要ないでしょうが。どちらも上から目線だけど。
註7:「月経が無くなる」事自体には不満をもつ女性はあまりみない、どちらかというと「面倒な月経がなくなり安堵」といった意見が多いかな。
註8:Hormone Replacement Therapy。
註9:漫然とやってるから、70歳でエストロゲン補充をしている人もたまに診るぞ!