By: Kazusei Akiyama, MD
2013年01月
今月のひとりごと:『暑い時期は特に食べ物に注意が必要だぞ。』
謹賀新年。20人の読者様、今年もご愛読をよろしくお願いいたします。日本語で新年といえば寒い感覚ですが、ブラジル在住の我々は寒いどころか、暑くってしようがないですね。暑い寒いといえば、先月のクリスマスがとんでもないですよね。元々ヨーロッパの冬の行事なので、雪や防寒服(註1)などがあるし、伝統的な会食は寒い時期の高脂肪・高カロリー食です。日本では12月は寒いのでデコレーションに雪があっても気にならないのだと思いますが、ブラジルをはじめ、南半球では違和感(註2)があってもいいのではないでしょうか?クリスマス食は熱帯では合いませんよ。あんなモノを夜中から食べたら(註3)翌日は必ず胃もたれ、胸焼け、胃食道逆流(註4)ですよ。
前置きが長くなりましたが、今月のひとりごとは当地での夏場の病気についてです。まず圧倒的に多いのが下痢や腹痛です。詳しくはピンドラーマ2010年2月号でひとりごとしてますが、簡単にいうと1月頃は感染症系の下痢が頻繁にみられます。暑さで食べ物が傷みやすいのや、汚染系の感染症が増えるからです。
『作り置きの時間が長いポルキロやビュッフェのような食べ物展示型が要注意だな。対策は早い時間帯に行く、痛みやすいモノは避ける。温かい食べ物は安心かというとそうでもない。なぜかと言うと、場合によっては細菌繁殖に丁度良い温度帯になっていたりするから。汚染系は特に貝類が危ない。特に夏の後半は止めておいたほうが良いぞ。夏人口が増えて海水汚染がひどくなるから。』
3月頃になると冷えのための腹痛が増えます。夏の間中冷たい食べ物や飲み物を沢山とるほどなりやすいですね。内臓が冷えて、消化不良になったり、胃けいれんを起こしたりします。
『暑いから食欲が無い、と冷たい物を食べてると、内臓が冷え、消化機能が低下し、さらに食欲が落ち、また冷たい物を食べる、の悪循環に陥るのだな。対策は夏にこそ温かい物、栄養がつく物を口にするだな。』
次に多いのが所謂「風邪」です。薄着をしたり、クーラーのかけ過ぎが原因ではよく見られます。サンパウロは標高が高いので夜間気温が結構低くなるので要注意です。また駐在の邦人では北半球へ出張や旅行が多いので、「冬の風邪」もありえます。
『サンパウロでの対策は夜中に気温が落ちても大丈夫な「寝方」をしないといけない。というか、気温が落ちる大前提で寝る、つまり、暑くっても布団や毛布を用意しておく、窓を開けっ放しにして寝ない、だな。夜間気温が高いリオでの対策はなんといってもクーラーの調整を上手くすることだな。』
窓を開けっ放しで寝ると、夏に流行るデング熱も要注意です(註5)。ただしこの感染症はサンパウロ在住の患者さんであっても、旅行先で感染したケースしか診たことがありません。対策は感染を媒介する蚊に咬まれないようにする事(註6)ですね。
『あと、当地の夏場に注意が必要なのは、レプトスピラ症だな。大雨によくある洪水と関係がある。これも感染症の一種でネズミが自然宿主であり、都会の場合はドブネズミ。洪水で下水があふれ、口や皮膚から感染する。犬も感染するのでペットがいる家庭は注意!対策は都市部の洪水には裸足や草履で歩くなど、不用意に水に入らない事だな(註7)。』
註1: サンタクロースの服は防寒服でしょ。
註2: 典型的な植民地の移植文化だな。
註3: クリスマスは25日の午前0時から始まるので、伝統的には会食はこの時間の前後から始まります。ところが、ブラジル人でもさすがにしんどいので、最近はもう少し普通の夕食の時間帯に開始する事もみられるようにようになってきた。
註4: 胃食道逆流症(逆流性食道炎)の話しはピンドラーマ2011年6月号を参照。
註5: 詳しくはデング熱の話し、ピンドラーマ2010年4月号を参照。
註6: サンパウロ市内で感染しないということではないが、パウリスタ通り周辺では確率が低い。リオは風土病だから要注意だな。
註7: ウイルス性肝炎とかの感染症もありうるぞ。とにかく都市部の洪水では水に入らない事!