あ~もうツケが廻ってきたのか…

By: Kazusei Akiyama, MD


2012年12月

今月のひとりごと:『あ~もうツケが廻ってきたのか

皆さんお元気でお過ごしでしょうか?師走になりました。今月のひとりごとは、一年のツケでも、飲み屋のツケでもありませんよ。ブラジルの「まともな教育がない社会」のツケの話しです。医療と関係ないとは言えません。

『当地では義務教育は6歳から9年間ある。Ensino Fundamental、基本教育と呼ばれるものだ。そういうことになっているが、実際には4年だけというのが内地にいくと結構多い。これは昔小学校と中学校の制度があり(註1)、どちらも4年ずつだった名残だそうだ。つまり、地方には小学校しかなかった。で、ず~とそのままで、1996年に法律が変わり、最低8年間学校にいかんとあかんよ(註2)、となっても絵に描いた餅状態になっているのだな。筆者の親友にミナス州教育局の上級職員を拝命されている女史がいるが、日本とも交流があり、関心が高い。先日でていた疑問が、日本の小学校(市立や区立などいわゆる公立)は「ある時点でグレードアップして中学校になるのか」だった。事情が分からないと「へ?」になるよな。で、事情は田舎が多いミナス州、つまり、くだんのず~と4年しかなかった学校を毎年1年ずつ足していき、9年まで到達することをやっているわけだ。そこで、日本でも同じように足していってしまいに次のステップの学校になるのかという質問なのだな:

「いや、小学校のままだよ。」

「じゃ、中学校はどうするの?」

「別に今から造らなくても、もうあるよ。」(註3) 

彼女は教養が無いわけでもないし(註4)、世間知らずというわけでもない。要するに感覚の問題になってくるのではないかと思う。2008年のUNESCOEFA Development Indexなる各国の教育開発指数によると(註5)ブラジルは調査された127カ国中88位であった。中程度の指数とされ、ましなアフリカの国なみ。南米ではエクアドルやボリビアより下位。実社会では要するに、「教育不足」だな。これが経済大国になり、社会活動するために色々ややこしいことをしないといけなくなってくると、スキル不足になってしまっている。間違いなく。(註6)』

20人の読者の皆さんは全般的なサービス低下を感じませんか?金融や小売業では顕著ではないでしょうか?医療に関しても、検査での受付がでたらめであったりします。アテンドする人によって対応が違いすぎます。信用があるとされている大手の検査機関F社でもそうですよ。サービスの内容は各自でチェックするしかないですね。教育不足は他に外食産業などでも現れます。食品の扱いが分からなかったり、間違っていたりすると食中毒の原因になりかねないです (註7)。この問題、教育不足に関してはこうしたら良いだろうと、筆者も提言のしようがありません でも予言はできます:「もっとひどくなるでしょう」。


11971年に廃止。

22010年より9年間。

3: 日本は増やすどころか、デフレ・少子化社会で、学校の統廃合が行われていますよね。

4: 教育論で大学院出ているのだな。

5: ほかにも指数が色々ありますが、ここではこれを使います。毎年リポートが出ていて、今年版もありますが、最後にまとめがあったのはこの2008年版です。学校に行ける状況(平等性)が大きいほど、文盲率(教育欠乏)が低いほど指数が高い。ちなみに1位日本、2位英国、3位ノルウェー。

6:ところが、現在の好景気のため、仕事にはありつけるので、「この程度」のスキルで十分だと勘違いする人間が増えている。ましてや、自分は勉強などしなくてもここまで来たのだと自慢する元国家元首の国だから、勘違いが加速する。そのため、実はなにもできないくにせ努力もせず、少し先でもっと高度な社会になった時に取り残される今の若い人たち、ロストジェネレーションが出るのではないかと言われている。

7:一番確率が高いのは消化器寄生虫感染だな。「トイレに行った後、ちゃんと手を洗う」といった教育すらできていない。