By: Kazusei Akiyama, MD
2012年10月
今月のひとりごと:『すぐ、半年目、一年目、に注意が必要です。』
皆様お元気ですか?気候が不順で、寒いのか暑いのかよくわかりませんね。この調子では体調の維持が大変です。さて今月のひとりごとで何の注意かと言うと、「当地に長期滞在する場合、体調不良になりやすい節目」についてです。開業も17年しているとサンパウロ駐在でいつ病気になりやすいかのパターンが判明してきます。
『*すぐに。これは当地に到着してすぐにということだな。大体1ヶ月以内なのだが、2週間目あたりが要注意だと思う。海外引っ越しの疲れやストレスと直結しているパターンだな。実質引っ越しは大変な労力を要するし、まして数年以上海外に転勤となると出発前に日本でやらないといけない業務が増える。大概この引っ越しは家族の内、妻が担当する事が多いので(註1)、この期間は女性が倒れる。小さな子供さんを抱えたお母さんや日本で仕事を持っていた妻(註2)が犠牲になりやすい。
*半年目。これは駐在3か月目から6ヶ月目の期間だな。実はこの期間が一番体調を崩しやすい。引っ越しの疲れがあり、新生活もまだ慣れず、ブラジルは治安が悪いと驚かされビクビクしているうちにぶっ倒れる。このパターンでは子供も含め家族のだれにでも起こり得る。
*一年目。これは1年ほど過ぎると、新生活にも慣れて、ホッとして気が緩み体調を崩すパターンだな。どちらかと言うと、お母さん方に多い。しかし、この一年目には、お父さん方が故障することがある。あまり診ないけど。その場合業務内容や人間関係など仕事と関連するストレスが高じて、病気になるのだ。症状が激しい事が特徴の一つかも。』
- 註1:夫は先に現地入りし、住居をはじめ生活基盤の手配などの担当がパターンかな。
- 註2:仕事の整理などで忙しい上に、引っ越しが…
新生活の慣れなどと関係のある「病気」ですから、海外生活が長かったり、何度も駐在経験があったりする方や家族のほうがなりにくいですね。一番よく診る疾患はいわゆる風邪ですが、元々持病があったり、病気の傾向があったりする方はそれが悪化したり発症したりすることもよくあります。 したがって、初めてサンパウロ(あるいはブラジル)に駐在の方は要注意だと考えます(註3)。このコラムの20人の読者様は大丈夫ですか?
- 註3:人生の3大ストレスは「引っ越し」「離婚」「死別」とされるが、その一つであるため。
『また今月のひとりごとにも「ストレス」が出てきたぞ。ストレス自体は悪いモノではない。異常事態に対応する生理的反応であり、この反応のために我々の先祖は恐竜のランチになるのをふせげたのだ(註4)。だから適度なストレスは仕事などの効率を上げるが、極度になると疲弊して低下する(註5)。 反対に気が緩んでもよくない。じゃ~どうしたらいいの?と聞かれるのだ。適当に気が張った生活を目指す。これだな。』
- 註4: 恐竜時代、捕食者に対してストレスを感じなかった哺乳類はあまり子孫を残していないはず。
- 註5: 前者はeustress、後者はdistressと呼ばれる。