By: Kazusei Akiyama, MD
2012年05月
今月のひとりごと:『日本人の顔はマスクで見えない』
4月に日本に行きました。桜の季節真っ只中で美しい日本でした。その反面、「花粉症」の季節でもあります。それでどちらを向いてもマスク着用の人ばかりでした。花粉症+マスクは完全に日本の都市文化に定着した感じがあります。広義の花粉症は植物の花粉にアレルギー反応をおこすことですが( 註1)、一般的にはスギやヒノキの花粉に対するもので鼻づまりやくしゃみなど鼻の症状、目のかゆみなど目の症状、咳やのどのイガイガなど喉の症状、皮膚のかゆみなどのセットで、かなりの人口が罹患するものがいわゆる花粉症と理解してもいいと思います。
『もともと日本では花粉症はなかったのだな。今のブラジルでもない。花粉や植物に対するアレルギー性鼻炎や結膜炎はあるのだが、国民的イベントではないぞ。日本では1960年代から報告されはじめ、現在では都市人口の30%までが花粉症になっている可能性がある。北米ではブタクサ、西欧ではイネ科の花粉症があることを考えると、先進国になるほど花粉症になりやすのだな。日本の場合、スギの大量植林のため、スギ花粉の量が増え、それが主な原因とされる。それだけではないぞ。アレルギーの発症や重症度というものは接触・曝露する量に比例するものではないのだな。つまり、アレルギー反応をおこす物であれば、微量でも十分おこす。スギ花粉が大量にあるということは、接触する機会が増えるということだけだ。問題は日本人がアレルギー体質になってしまったところにあると考える。』
アレルギー体質と都市化は密接しています(註2)。大気汚染のため呼吸器系が病気になりやすくなる、アスファルトやコンクリートで造られた街、緑地の減少のため、花粉が吸着分解されにくい環境なども原因に挙げられてます。筆者はそれ以外に、都市生活に多い例えば洗剤や防腐剤のような化学製品や食生活も関連していると思います。
『これの根拠は個人的な体験でしかないが、非常に興味深い事があった。とある理由で日本の公立(いずれも市立)の小学校で講演をする機会があったのだが、明らかに若くて、共働きが多い地域の子供達は明らかに主婦かつ教育ママの多い地区の子供達に対し、アトピー性皮膚炎が圧倒的に多かった(註3)。どちらも平屋が多い、地方都市の郊外の街であったことを考えると、生活仕様からくる食生活の違いであるのではないかと思う。前者のほうが簡要食品、スナック菓子、加工食品などの消費が多くあるように見えた。』
いずれにしてもアレルギー体質になる要因は少なくないと考えられますので、花粉症でない方でも安心できません。19人の読者様の都市生活、大丈夫ですか?
ちなみにマスク、しっかり装着しないと意味がありません(註4)。立体タイプはちゃんと顔の大きさにあった物を使いましょう。平型はワイヤー部を鼻にあて、ワイヤーを曲げて鼻の形に形成し、下部は顎の下までしっかり引き下げます。高価なものより、安価で1日2回以上交換(捨てる)ほうが効果的です(註5)。
註1:アレルギー性鼻炎、アレルギー性咽頭炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、花粉性肺炎など。
註2:必ずしも先進国と関連とは言えない。自然が多く、生活仕様が日米とは違う北欧ではあまりアレルギー性疾患はない。
註3:同じ40人くらいのクラスの前者が約4割、後者が2~3人。いずれも保護者(ほとんど母親)と接する機会があった。
註4:この場合の意味は「花粉を吸入しない」ですね。日本の文化ではもともとマスクは自身の病気を他人様にうつさない心遣いであったのですが。
註5: マスクだらけで日本は今不気味だぞ。顔、そして表情が見えないから。