ひげ一つで世の中の見方が変わるのだ

By: Kazusei Akiyama, MD


2011年09月

今月のひとりごと:『ひげ一つで世の中の見方が変わるのだ』

今月もまたどう医療と関係があるのだと文句が出そうなひとりごとです。このコラムはひとりごとなので、好きな事を書いて良いと24人の読者様にはご了承いただいてますのでいいのです。髭は男性ホルモンに依存するので、あたりまえですが、思春期以降の男性に濃く生えます(註1)。一般的に我々モンゴロイド系人種は体毛が少なく、白色人種が含まれるコーカソイド系は髭をふくめ多いのは一目瞭然です。多い少ないはその人種が分布している地域の気候風土への対応との学説が有力です(註2)。でもそれ以上におもしろいのが、以前「体重」についての時代の変化に書いたように、「髭」も時代によって評価、流行があるところです。これは人間の第一印象である顔に大きく影響を与えるからであるからなのですね。

『なぜ髭のことを書いているかというと、筆者が7月のお休みの時に3週間ほど髭剃りを怠けたのだな。この無精髭の状態で「大胆にも」人前にでたら、以外や、女性に良いの悪いのとかなり意見をされた。で、以外にも「良し」の意見が多く、どうしてなのかちょっと考察したわけだな。筆者自身は初めての髭面ではっきり言って違和感があるし、このままにするかどうか迷っているわけだけど、いろんな意見がおもしろかったのでひとりごとするぞ。』

髭に関するアンケート(女性の意見)を色々みると、大きく分けて「嫌い」「好き」「どっちでもよい」の3回答になります。「嫌い」の代表的な理由は「不潔そう」「清潔感がない」(註3)、「好き」の場合は「清潔感がある」「おしゃれ」(註4)、最後の意見のキーワードは「似合っていれば」(註5)であるのではないかと観察します。こう見ると、好きと嫌いの分かれ目は清潔であるどうかになります。つまり、おしゃれに手入れしていれば可で、どこかの公園で生活しているおっさん(髭=堕落?)までいかなくても、ちゃんと風呂にも入らないような輩の無精髭はNGと言うことになるのでしょうか?

『でも「嫌い」の意見によくみるので相反しているいるのが、「手入れしないとかえって不潔」X「なにを頑張って手入れしているの」。これは判らん。 どうしてほしいんだ? 24人の読者様の女性の解説が必要ですな。もう一つの分岐点が、髭と触れるか触れないかで好みが分かれる所だな。触れると痛いから嫌が一番多く、触れないとどっちでもよいのグループになるのが多い。つまり身近な髭は嫌いで、観賞用は好きになるのかな(註6)?』

それで比較的身近な女性達の意見を聞く事にしたのですが、大体3対2で「良い」が多いので、わりと「似合っている」ほうなのでしょうか?医者が髭とは不潔でいかんとのご意見もいただいておりますが。でも一番鋭いコメントが:「世間に背を向けているのでは?」でした。外界と隔絶?そうなのかな?

 

註1:もちろん女性にも男性ホルモンはあるので、同じように思春期以降若干髭が生えます。人種や個人差により濃さが違いますが、一般的な状況以上であると、内分泌系の病気である場合(例:多膿疱性卵巣症候群、下垂体腫瘍、副腎腫瘍など)が考えられますので、精査が必要です。

註2:その他に以前書いた「進化医学」の観点から見るのもおもしろいです。髭の有無は男性ホルモンの有無、つまり生殖可能である事を示す。人類の黎明期では寿命が20才くらいで、繁殖期間が短かったことが関係しているのではないか?髭のある男性は生殖可能であることを女性にアピールすることができ、子孫を残す可能性が増えた。反対に髭のない女性はない事で女性である事をアピールできた。これは毛皮や布など何らかで体を覆っていた寒冷地に当てはまる。裸で暮らすことができる年中暑い熱帯地では男女の識別のために髭は必要なかったので比較的退化した。

註3:その他多い意見:胡散臭い。汚らしい。強く見せようとする心理がきらい。コンプレックスを隠している。似合わない。性を強調しているようで気持ち悪い。自意識過剰。

註4:その他多い意見:かっこいい。セクシー。男らしい。ワイルド。(嫌いと比べて少ないな…)

註5:この似合っていればの基準もおもしろい。童顔、おじさん、外国人、かえって日本人、細身、やさ男、男らしい人などに、似合う似合わんと女性の好み放題。基準なし。

註6 :観賞用の俳優や選手、タレントの名前が出るのだが、髭があるからかっこよいのは一人もいないのでは?