最近騒がしい「放射線」は身近にあるぞ。

By: Kazusei Akiyama, MD


2011年05月

今月のひとりごと:『最近騒がしい「放射線」は身近にあるぞ。』

今チェルノブイリ原発事故の25周年を迎えてます。また、東日本大震災の福島原発事故も現行しているので今回は「被曝」についてひとりごとです。被曝とは「放射線にさらされる(曝露される)状態」です。もともと放射線は自然界に存在するもので、さほど害をあたえそうにないのですが、現在の我々の理解では「放射線=有害」ではないでしょうか(註1)?被曝による影響がでてくるのはその「量」によります。有害であるという概念はあまりにもまわりの生活に被曝する機会、状況が多いことを示すのではないかと考えます。

『おおまかに、大量被曝=急性=確定的影響、低量被曝=慢性=確率的影響、と分けることができる。ここでは後者について考えてみるが、しかし前者について恐ろしいのが確実に病気と死に至りますよというところですな。毒性が強い。例えば原爆のような大量被曝であるとその量が明らかに影響があるのは疑問の余地がない。問題は大量・低量の線引きと「どれだけ低量が(でも)影響を起こすか」であるのだな(註2)。』

福島原発事故でみんながナーバスになっているのはこの低量被曝のところです。政府が「健康に害はないレベル」といっても、本当にそうなのか?と疑問がでてきます。なぜこのようになるかというと、「健康に害があるレベルははっきりしていても、害がないレベルは、実は、はっきりしていない」からなのです。

『測定の問題(実際に発表されている量なのか)や透明度の問題(実際起こっている事が発表されているのか)などは無視して考えてみるぞ。「はっきりしていない」から「確率的影響」という言葉が使われる(反対に「はっきりしている」レベルだと「確定的影響」になる)。註2に書いたとおり、これらの影響は仮説であり、だれも「このレベルだと問題ありません」とはいえないぞ。正しくは「このレベルだと問題がでる可能性が低い・極めて低い」だろう。この背景があるから「本当か?」になるのではないかと思う。』

一般人口では低量被曝が一番身近で関心があるものと考えられるのが、病気と関係があるからです。ニュースでみる内部被曝や甲状腺癌などですね。でも、医療の現場にいると患者さんがあまり気にされていないのが諸検査(註3)による人工被曝です。忘れてはならないのが、検査による被曝はその検査の所見による情報(病気の確定など)のメリットがデメリットを上回ると判断されるから指示するものであって、手放しで喜んでしてもよいものではありません(註4)。このコラムの24人の読者様(註5)も検査する時、検査を希望する時、は是非この事を念頭においてもらいたいものです。

 

1:被曝は天然被曝と人工被曝に分類できる。天然では宇宙線(飛行機搭乗で被曝します)や地殻(ラドン温泉が一例)からの放射線や天然の放射性物質(カリウム40や炭素14)などがある。それら以外が人工。また、外部被曝と内部被曝にも分類できる。外部被曝に対して、体内に取り込んだ状態が内部被曝。経路はa.経口、b.皮膚吸収、c.肺で吸収(吸入)、d.傷口から血管に入る、の4経路。内部被曝の問題点は外部の様に汚染除去できないので長期間被曝するところにある。

2:放射線の被曝量と健康の影響に関する仮説。

1.一定量(しきい値と呼ばれる)より被曝量が少ないと害がない

2.有害な効果が量と共に増大する(LNT仮説と呼ばれる、主流)

3.少量の被曝は健康によい、しきい値以上は害がある(ホルミシス仮説)

3:レントゲン関連、CTスキャン、核医学、マンモグラフィーなど。詳しくはICRP International Commission on Radiological Protectionの勧告を参照。検査のみではなく、勿論治療用の放射線も同じ考え方をする。

4:例えば癌のリスクが少ないのに「癌検診」と称して全身CTで被曝するのは本末転倒ではないだろか?

5:そうです、今月から読者様が二人増えたのです。新規に読者であるとお二人より直接申告がありました。深謝!