By: Kazusei Akiyama, MD
2010年03月
今月のひとりごと:『心と体は切り離して診られないだろうが』
そろそろ季節の変わり目です。毎日気温が変わり、雨が降ったり、暑かったり、寒かったり、鬱陶しいお天気です。「鬱陶しい」とは「晴れ晴れしない」のほかに「気分が重苦しい」意味がありますね。今回はこの「うつ」について考えてみます。医学で「鬱」が分類されるのは精神および行動の障害で、いわゆる精神科領域です(註1)。
- 註1:①気分障害のうつ病;②神経症・ストレス性障害の不安うつ障害;③小児の行為および情緒の混合性障害の抑うつ性行為障害;④産褥に関連したうつ障害。
『うつの分類については心の病気であるとか脳の病気であるとか、生物的成因や心理的成因など現時点でも諸説あるが、簡単に分けると、躁鬱病(最近では双極性感情障害と呼ばれる)のようなかなり重篤な症状がでるものと、ストレスや自律神経失調症に関連するうつ状態に分類できると思う。前者の有病率(註2)は日本人で約2%であるが、実は病態があまりにも広範囲にわたるので調査しにくい後者が圧倒的に多い(一般人口の25%という調査もある)。ところが日本ではうつ=精神科=きちがい科という構図ができあがっていたので、後者の「ちょっとした」うつ状態ではなかなか精神科を受診できなかった・しなかった・したくなかった。それで1996年から「心療内科」なるものが標榜できるようになったのだな。この名称は日本にしか存在しない。一部の「専門家」からは心身症を治療する内科で精神科ではないといってるが、この科だったらかかりやすいのであればいいじゃないの?』
- 註2:有病率:ある時点で対象人口に見られる患者数。この場合100人に2人。
地域医療や一般内科の診療の実態ではうつ状態(註3)がよく見られます。最近の生活状況ではストレスになることが多かったり、あるいはそのために自律神経失調症などになるためではないかと思われます。そのため、単なる風邪のような身体的症状を訴えて来られても精神面も診る必要があると筆者は考えます。反対に精神的症状をきたす器質的疾患(註4)もあるので、一概に精神病であるとは言えません。精神的症状がある場合、必ず器質的原因を除外した上でしか精神障害とは診断できません。器質的疾患であれば、原因を治療すれば(可能であれば)うつ自体も良くなります。精神障害であれば、必要期間投薬したり、カウンセリングを受けたり、東洋医学的治療をしたり、いろいろアプローチができます。
- 註3:一過性のストレス性障害(急性ストレス障害、適応障害、心的外傷後ストレス障害など)、自律神経失調症、パニック障害、恐怖症性不安障害、心気障害、心因性や内因性うつ、など。
- 註4:一番多いのが甲状腺疾患。副腎や副甲状腺疾患。脳血管障害。パーキンソン病。脳腫瘍。膠原病。重金属中毒。
『うつの症状(註5)はつらい。日本人的に根性論で克服するのもいいけど、治療したほうが楽じゃないの?引きこもったりしてないで。とにかく症状が2週間以上つづくようだとなにかがおかしいから医者に診てもらいましょう。』
- 註5:①抑うつ気分(気分の落ち込み、いやな気分、空虚感、悲しさなど);②興味・喜びの喪失;③食欲や睡眠の増減